幻の馬
「大映70周年特集」と銘打って上映された40本余りの映画のなかの1本で、上映期間はわずか3日間。友達が教えてくれたおかげで、最終日に滑り込みで鑑賞することができました。後で知ったのですが斎藤修さんもいらっしゃっていたそうです。
作品のクオリティとしては正直なところ、ウ〜ン……という感じなのですが、1950年代の日本競馬の映像記録としてはきわめて貴重です。しかもカラー! 人間の心理として、日常の当たり前の光景ほど後世に残す価値を感じないものですから、このような映画が作られないかぎり、当時行われていた競馬の様子が素に近い状態でカラーフィルムに収められることはまずなかったでしょう。
1933年に完成した東京競馬場の初代スタンドが、鮮やかなカラー映像でスクリーンにドーンと現れると、こりゃ凄いと感嘆せざるをえません。圧倒的な存在感です。三十数年前に倒れてしまった3コーナー内側の大ケヤキも確認できます。レースシーンも素晴らしいですね。低空からの空撮は迫力十分で感心しました。
ホウヨウボーイ、アンバーシャダイ、シリウスシンボリなどを管理された故二本柳俊夫調教師(当時は騎手)が出演されているのも見どころです。セリフをしゃべっているのですが、かなりハイグレードな棒読みだったので劇場に緊張感が走りました(笑)。
映画の主役はタケルというサラブレッド。冒頭に記したとおりトキノミノルがモデルです。伝記映画ではないので、じっさいには存在しない数々のエピソードがストーリーに盛り込まれています。ただ、牧場のシーンに登場する「テトラーチの3×4」というセリフは史実に沿ったものです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a01029a/
見てのとおりトキノミノルは The Tetrarch 3×4。同馬を生産した本桐牧場の笠木政彦さんが「フィッツラックの18.75%理論」を参考にこの配合を狙って作ったのは有名なエピソードで、いわゆる“奇跡の血量”というやつですね。いまではほとんど聞かなくなりましたが、わたしが競馬を始めたころは配合理論といえば奇跡の血量、というぐらい頻繁に耳にしたものです。トキノミノルを作った実績がなければとっくに見向きもされなくなっていたでしょう。
ご紹介したシーンのいくつかは YouTube にアップロードされているので、興味のある方は検索してご覧になってみてはいかがでしょうか。
- 2013.01.02 Wednesday
- 映画
- 00:58
- comments(4)
- trackbacks(0)
- -
- -
- by 栗山求