マイルチャンピオンシップはモーリス
中団の外につけた△モーリス(4番人気)が直線半ばで豪快に抜け出し、○フィエロ(2番人気)、◎イスラボニータ(1番人気)の追撃を抑えて春秋マイルG1を制覇しました。
https://youtu.be/XXXIOlEjfuI?t=28s
800m通過47秒1は過去10年間で2番目のスローペース。最も遅かった09年(47秒2)は良馬場とはいえ雨が降っていたので、実質的には最も遅い流れだったといえるでしょう。レースの上がり3ハロン33秒8はレース史上最速。これを中団から差して2着に1・1/4馬身差をつけた勝ち馬は力が抜けていたと思います。
当初予定していた毎日王冠を使えず、仕上げ直して臨んだ一戦だったので、おそらく100%のデキではなかったでしょう。前日の輸送では渋滞に巻き込まれ、到着までに11時間半も掛かったというアクシデントもありました。それらを考慮すると、今回の勝利は価値が高く、マイル戦における他馬との相対的な能力差は春の時点より開いているという印象です。長らく空位が続いていたマイル王の座がようやく埋まりました。12月13日に行われる香港C(G1・芝1600m)に出るようなら期待できるでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011100655/
血統に関しては6月8日のエントリー「安田記念はモーリス」から引用します。
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父スクリーンヒーローは現役時代、ジャパンC(G1)を制覇したほか天皇賞・秋(G1)ではカンパニーの2着と健闘し、ウオッカの追撃を抑えました。好位で流れに乗る器用さがあり、スローペースの上がり勝負になったときに好走する、というタイプで、ジャパンCと天皇賞・秋はいずれもこのパターンでした。競走馬としてのタイプはサンデーサイレンスやダイナアクトレス的な要素が強く出ていた馬だと思います。2代父グラスワンダーは Roberto や Danzig の影響を強く受けたせいか、どちらかといえば中山や旧阪神を得意とし、安田記念はエアジハードのハナ差2着でした。
種牡馬としては、モーリスのほかにミュゼエイリアン(毎日杯)、グァンチャーレ(シンザン記念)、ゴールドアクター(菊花賞−3着)。クライスマイル(レパードS−2着)などの活躍馬を出しています。ゴールドアクターの母ヘイロンシンは「キョウワアリシバ×マナード」というきわめてマイナーな種牡馬同士の組み合わせ。このレベルの繁殖牝馬からG1で馬券になる馬を出すのは、ディープインパクトやキングカメハメハ級の種牡馬でも容易なことではないでしょう。高い能力を伝える一方で、好不調がはっきりしており、上り調子のときはポンポンと連勝するのですが、停滞期に入るとリズムを取り戻すまでに時間が掛かる、という特徴も垣間見えます。このあたりは Roberto 系らしいところです。体質的に丈夫なタイプではないので、無理使いは禁物です。
モーリスの母メジロフランシスは、現役時代にJRAで7戦未勝利、NARで1戦未勝利という成績。また、繁殖牝馬としてもスクリーンヒーローを付けるまでは平凡な成績しか残していませんでした。Sadler's Wells、モガミ、フィディオンといったスタミナ血統を近い世代に抱えているため、スピード面に弱点があります。
2代母メジロモントレーはかつてPOGで指名した馬で、デビュー戦から引退まで3年間応援し続けた馬でした。獲得した重賞タイトルはアメリカJCC(G2)、アルゼンチン共和国杯(G2)、金杯・東(G3)、クイーンC(G3)の4つ。3歳時は心身ともに幼さが目立ち、牝馬三冠レースではオークス5着、エリザベス女王杯7着と、ともに人気に推されながら結果を出せませんでした。しかし、「モガミ×フィディオン」という晩成型のステイヤー血統だけに古馬になって本領を発揮。アルゼンチン共和国杯→アメリカJCCを牡馬相手に連勝したときは、天皇賞・春を勝てるのではないかと夢を見ました。脚部不安がなければ……といまだに悔やまれます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1986106826/
モーリスが一介のマイラーでないのは、メジロモントレーや Sadler's Wells といった迫力ある重厚な血を抱えているからでしょう。仮にスピードのない馬にこうした血が入っていたら鈍重さの元凶としてやり玉に挙げられるところですが、モーリスのようにスピードに恵まれた馬に入っている場合、底力やスピードの持続力をサポートする重要な要素となります。トニービンを母の父に持つカレンチャン、Pleasant Colony を母の父に持つキンシャサノキセキなど、スピードタイプの大物にこうした例は珍しくありません。ちなみに、メジロモントレーは見た目からしてアマゾネス風の、牝馬にしては野性味あふれる筋肉質の馬体がセールスポイントで、ボディバランスに優れたタイプでした。モーリスの馬体を見るとその面影が感じられます。
スクリーンヒーロー産駒のスピードは、母ランニングヒロインが強い影響を及ぼしているのではないかと考えられます。その父サンデーサイレンス、その母ダイナアクトレスという血統で、ダイナアクトレスは毎日王冠(G2)など5つの重賞を獲得し、京王杯オータムH(G3)では芝1600mの日本レコード(1分32秒2)を樹立しました。ジャパンCでは3着と健闘しています。G1こそ獲れなかったものの、まぎれもなく80年代を代表する強豪牝馬の1頭で、ノーザンテースト牝馬の最強馬だったと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1983104087/
モーリスはこのまま順調にいけば、いずれ社台スタリオンステーションで種牡馬となるはずです。グラスワンダー、ダイナアクトレス、メジロモントレーなど、80〜90年代の日本競馬を盛り上げた名馬たちが、モーリスを通じて新しい血として甦り、わが国のサラブレッド改良に役立てるとしたら、これぞ血のダイナミズムと呼べるものです。それらの現役時代を眺めていたファンとしてはたまらないものがあります。
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文中のゴールドアクターは先日のアルゼンチン共和国杯(G2)を勝ちました。スクリーンヒーローの来年の種付けは、申し込みを断るのに苦労しそうです。
◎イスラボニータ(1番人気)は3着。スタートの出遅れがなければ勝ち馬と一騎打ちになっていたのではないでしょうか。予想はマルチ設定だったので△○◎で3連単1万2000円的中です。
https://youtu.be/XXXIOlEjfuI?t=28s
800m通過47秒1は過去10年間で2番目のスローペース。最も遅かった09年(47秒2)は良馬場とはいえ雨が降っていたので、実質的には最も遅い流れだったといえるでしょう。レースの上がり3ハロン33秒8はレース史上最速。これを中団から差して2着に1・1/4馬身差をつけた勝ち馬は力が抜けていたと思います。
当初予定していた毎日王冠を使えず、仕上げ直して臨んだ一戦だったので、おそらく100%のデキではなかったでしょう。前日の輸送では渋滞に巻き込まれ、到着までに11時間半も掛かったというアクシデントもありました。それらを考慮すると、今回の勝利は価値が高く、マイル戦における他馬との相対的な能力差は春の時点より開いているという印象です。長らく空位が続いていたマイル王の座がようやく埋まりました。12月13日に行われる香港C(G1・芝1600m)に出るようなら期待できるでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011100655/
血統に関しては6月8日のエントリー「安田記念はモーリス」から引用します。
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父スクリーンヒーローは現役時代、ジャパンC(G1)を制覇したほか天皇賞・秋(G1)ではカンパニーの2着と健闘し、ウオッカの追撃を抑えました。好位で流れに乗る器用さがあり、スローペースの上がり勝負になったときに好走する、というタイプで、ジャパンCと天皇賞・秋はいずれもこのパターンでした。競走馬としてのタイプはサンデーサイレンスやダイナアクトレス的な要素が強く出ていた馬だと思います。2代父グラスワンダーは Roberto や Danzig の影響を強く受けたせいか、どちらかといえば中山や旧阪神を得意とし、安田記念はエアジハードのハナ差2着でした。
種牡馬としては、モーリスのほかにミュゼエイリアン(毎日杯)、グァンチャーレ(シンザン記念)、ゴールドアクター(菊花賞−3着)。クライスマイル(レパードS−2着)などの活躍馬を出しています。ゴールドアクターの母ヘイロンシンは「キョウワアリシバ×マナード」というきわめてマイナーな種牡馬同士の組み合わせ。このレベルの繁殖牝馬からG1で馬券になる馬を出すのは、ディープインパクトやキングカメハメハ級の種牡馬でも容易なことではないでしょう。高い能力を伝える一方で、好不調がはっきりしており、上り調子のときはポンポンと連勝するのですが、停滞期に入るとリズムを取り戻すまでに時間が掛かる、という特徴も垣間見えます。このあたりは Roberto 系らしいところです。体質的に丈夫なタイプではないので、無理使いは禁物です。
モーリスの母メジロフランシスは、現役時代にJRAで7戦未勝利、NARで1戦未勝利という成績。また、繁殖牝馬としてもスクリーンヒーローを付けるまでは平凡な成績しか残していませんでした。Sadler's Wells、モガミ、フィディオンといったスタミナ血統を近い世代に抱えているため、スピード面に弱点があります。
2代母メジロモントレーはかつてPOGで指名した馬で、デビュー戦から引退まで3年間応援し続けた馬でした。獲得した重賞タイトルはアメリカJCC(G2)、アルゼンチン共和国杯(G2)、金杯・東(G3)、クイーンC(G3)の4つ。3歳時は心身ともに幼さが目立ち、牝馬三冠レースではオークス5着、エリザベス女王杯7着と、ともに人気に推されながら結果を出せませんでした。しかし、「モガミ×フィディオン」という晩成型のステイヤー血統だけに古馬になって本領を発揮。アルゼンチン共和国杯→アメリカJCCを牡馬相手に連勝したときは、天皇賞・春を勝てるのではないかと夢を見ました。脚部不安がなければ……といまだに悔やまれます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1986106826/
モーリスが一介のマイラーでないのは、メジロモントレーや Sadler's Wells といった迫力ある重厚な血を抱えているからでしょう。仮にスピードのない馬にこうした血が入っていたら鈍重さの元凶としてやり玉に挙げられるところですが、モーリスのようにスピードに恵まれた馬に入っている場合、底力やスピードの持続力をサポートする重要な要素となります。トニービンを母の父に持つカレンチャン、Pleasant Colony を母の父に持つキンシャサノキセキなど、スピードタイプの大物にこうした例は珍しくありません。ちなみに、メジロモントレーは見た目からしてアマゾネス風の、牝馬にしては野性味あふれる筋肉質の馬体がセールスポイントで、ボディバランスに優れたタイプでした。モーリスの馬体を見るとその面影が感じられます。
スクリーンヒーロー産駒のスピードは、母ランニングヒロインが強い影響を及ぼしているのではないかと考えられます。その父サンデーサイレンス、その母ダイナアクトレスという血統で、ダイナアクトレスは毎日王冠(G2)など5つの重賞を獲得し、京王杯オータムH(G3)では芝1600mの日本レコード(1分32秒2)を樹立しました。ジャパンCでは3着と健闘しています。G1こそ獲れなかったものの、まぎれもなく80年代を代表する強豪牝馬の1頭で、ノーザンテースト牝馬の最強馬だったと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1983104087/
モーリスはこのまま順調にいけば、いずれ社台スタリオンステーションで種牡馬となるはずです。グラスワンダー、ダイナアクトレス、メジロモントレーなど、80〜90年代の日本競馬を盛り上げた名馬たちが、モーリスを通じて新しい血として甦り、わが国のサラブレッド改良に役立てるとしたら、これぞ血のダイナミズムと呼べるものです。それらの現役時代を眺めていたファンとしてはたまらないものがあります。
………………………………………………………………………………………
文中のゴールドアクターは先日のアルゼンチン共和国杯(G2)を勝ちました。スクリーンヒーローの来年の種付けは、申し込みを断るのに苦労しそうです。
◎イスラボニータ(1番人気)は3着。スタートの出遅れがなければ勝ち馬と一騎打ちになっていたのではないでしょうか。予想はマルチ設定だったので△○◎で3連単1万2000円的中です。
- 2015.11.23 Monday
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- 12:30
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- by 栗山求
フォームも含めて大きいのはわかるのですが、どこか不格好に感じて、完成途上かな?というところもあります。