パーフェクト種牡馬辞典


イナリワン死す


ミルジョージは89年に総合リーディングサイアー(中央と地方を合算したもの)に輝きました。82年から続いていたノーザンテーストの連覇記録は「7」でストップ。その立役者となったのがイナリワンです。天皇賞・春(G1)、宝塚記念(G1)、有馬記念(G1)と3つのG1を制し、この年だけで3億円以上の賞金を稼ぎました。

ミルジョージとノーザンテーストの収得賞金の差は約1億8000万円。ミルジョージの中央における勝利数はノーザンテーストの半分以下だったにもかかわらず、収得賞金で上回ったのは、イナリワンの頑張りが大きかったからです。

ミルジョージは競走馬として無名に近かったので、種牡馬としての知名度も低く、初期の産駒は地方競馬に入厩することも多かったのですが、そこからロッキータイガー、ミルコウジ、シナノジョージ、ジョージレックス、ダイタクジーニアス、イナリワン、ロジータなど、地方競馬の名馬を次々と送り出し、一流種牡馬に上り詰めました。

ロッキータイガーはジャパンC2着馬。イナリワンは前述のとおり中央のG1を3勝し、年度代表馬に輝きました。「Mill Reef×Ragusa」という組み合わせは、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを勝った馬同士の配合であり、気性の激しさ、パワー、芝適性に加え、母の父 Ragusa は Ribot 系なので大舞台での強さにも定評がありました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1984106229/



イナリワンを競馬場で初めて見たのは、まだ重賞に登場する前の3歳時でした。怪我で春のクラシックを棒に振ったものの、デビュー以来の連勝を継続しており、大物候補として大井ファンの間で噂になっていました。

87年8月のりんどう特別(ダ1600m)だったと思いますが、イナリワンを見るためにナイトレースの大井競馬場を訪れました。中団追走から直線で外に持ち出し、余裕綽々の手応えで鮮やかに差し切りました。ここではクラスが違うな、と思いました。

それ以降、ほとんどのレースを競馬場に足を運んで見ています。フェートノーザンとの一騎打ちとなった笠松の全日本サラブレッドC(ダ2500m)も現地に行きました。このときの様子は『地方競馬の黄金時代』(斎藤修監修/戎光祥出版)に寄稿しています。
http://www.amazon.co.jp/dp/4900901970

イナリワンの血統は、「ミルジョージ×ラークスパー×ソロナウェー」というもので、母方の血は、当時にあっても古くささを感じさせるものでした。ただ、3代母ヤシマニシキは二冠馬ボストニアンの全姉で、4代母の神正はダービー馬トクマサの半妹と質が高く、当時好きだったガルダンサー(札幌3歳S)も神正のファミリーから誕生していたので、血統に親しみを持ちました。

母方にソロナウェーを持つミルジョージ産駒は成功しており、スーパーグラサード(新潟大賞典)、ジョージタイセイ(東京ダービー)、ツキノイチバン(金盃、アフター5スター賞)、イーグルジャム(東海大賞典)などが出ています。

イナリワンの中央におけるパフォーマンスは地方時代よりも素晴らしく、前述のとおりG1を3勝。そのうち天皇賞・春と有馬記念はレコード勝ちでした。長距離専用ではなく、毎日王冠(G2)ではオグリキャップと馬体を接しての追い比べとなり、わずかハナ差敗れましたが、この年のベストレースに推す声もあったほどの名勝負でした。

引退式はオグリキャップの伝説のラストランの当日昼、中山競馬場で行われました。史上最も多くの人に見送られた引退式だったと思います。

種牡馬としては、地方競馬でツキフクオー(東京王冠賞)やイナリコンコルド(大井記念など重賞4勝)が重賞を勝ちました。しかし、中央競馬ではシグナスヒーローがアメリカJCC(G2)、日経賞(G2)など5つの重賞で2着を重ねたものの、ついにタイトルを手にすることはありませんでした。

スピードと瞬発力を武器とするサンデーサイレンスが日本競馬に革命を起こし、なおかつトニービンやブライアンズタイムのような質の高い種牡馬が台頭することによって、イナリワンのような旧時代の血が通用する余地はなくなりつつありました。

2月7日、北海道占冠村あるぷすペンションにて、32年の生涯を閉じました。繁殖牝馬に残ったわずかな血から、いつか大物が誕生して重賞を勝ってほしいものです。



コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック



プロフィール

カレンダー

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< July 2017 >>

最近の記事

カテゴリー

アーカイブ

recent comment

recent trackback

LINK

検索

携帯

qrcode