パーフェクト種牡馬辞典


皐月賞はアルアイン


雨に祟られた前週の競馬を見て、皐月賞(G1)は荒れた馬場で行われるかもしれないと考えていたのですが、土曜日の3歳未勝利戦(芝2000m)の勝ちタイムは2分00秒4。意外なほど時計が速いのでびっくりしました。最近は開幕週が外伸びで開催が進むにつれて内伸びになったり、路盤が踏み固められる影響なのかだんだん時計が速くなることも珍しくありません。

本番の3レース前に行われた鹿野山特別(1000万下・芝2000m)が1分58秒7。例年2分ジャストぐらいの決着となるレースだけに、この時点で高速馬場であることは疑いようがありませんでした。

そして本番の皐月賞。先頭アダムバローズ(11番人気)は前半1000mを59秒0で通過。レース史上4番目のハイペースです。それよりもさらに速いペースだった13年(58秒0)、16年(58秒4)、94年(58秒8)はいずれも前傾ラップでしたが、今年は後半1000m58秒8。前半よりもさらに速いラップを刻みました。高速馬場の影響でしょう。ただ、コンディションの問題を抜きに、スピードの持続力が問われる厳しい流れだったのは確かだと思います。

好位追走から抜け出したアルアイン(9番人気)は1分57秒8のレ−スレコード。15年の中山金杯(G3)でラブリーデイが記録したコースレコードとタイ記録です。
https://youtu.be/jtGre--FVEE?t=1m43s

通算成績は5戦4勝。6着と敗れた1月のシンザン記念(G3)は直線で挟まれ、落馬寸前の不利を被りました。それを考えると全勝に近い戦績といえるでしょう。前走の毎日杯(G3)は芝1800mの勝ちタイムが1分46秒5と、レース史上3番目の好タイムでした。時計勝負に対する裏付けがあったことも大きかったと思います。

今回の1着から5着までを父馬とともに記すと以下のようになります。

1着 アルアイン(父ディープインパクト)
2着 ペルシアンナイト(父ハービンジャー)
3着 ダンビュライト(父ルーラーシップ)
4着 クリンチャー(父ディープスカイ)
5着 レイデオロ(父キングカメハメハ)

緩みのないハイペースで展開したので、スピ−ドの持続力に秀でた血統が上位に来ました。リーディングサイアーを争う1着と5着の父はともかく、2〜4着のハービンジャー、ルーラーシップ、ディープスカイは、速い脚が要求されるレースでは持ち味を発揮しづらいタイプです。

昨年5月3日、グリーンチャンネルで放送された「JRA-VAN Presents ザ・POGドラフト会議2016−2017」で、アルアインは須田鷹雄さんが指名されました(優勝は須田さんでほぼ確定的です)。わたしも出演し、席が隣同士でした。収録の合間に須田さんから「アルアインは配合的にどうですか?」と訊かれたので、「わたしの見立てではあまり評価できないですね」と答えました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2014106046/



母ドバイマジェスティはBCフィリー&メアスプリント(米G1・ダ7f)の覇者で、米チャンピオン牝馬スプリンターに選出されました。ソウルスターリングの母スタセリタもそうですが、このクラスの繁殖牝馬がノーザンファームや社台ファームに珍しくないのは、購買した当時、日本が円高だったことも大きな理由です。また、リーマンショックから完全に立ち直っていないアメリカやヨーロッパの生産界は景気が冷え込んでおり、現在よりも相場が安かったという事情もあります。社台グループはこのチャンスを逃さず、積極的に海外へ出ていって良質の繁殖牝馬を購買しました。サトノダイヤモンドの母マルペンサなどもそうして手に入れた1頭です。

アルアインの母の父 Essence of Dubai はスーパーダービー(米G2)、ノーフォークS(米G2)、UAEダービー(首G2)などを制し、種牡馬としてはアメリカと南米ベネズエラで供用されました。その父 Pulpit(米リーディングサイアー Tapit の父)、母 Epitome(米2歳牝馬チャンピオン)という良血ですが、あまり成功したとはいえません。ドバイマジェスティが唯一の大物といっていいでしょう。2代母の父 Great Above は米年度代表馬 Holy Bull の父で Dr.Fager の相似な血。3代母 His Majesty は Ribot 系の米リーディングサイアーで Graustark の全弟。

母ドバイマジェスティは異系色の強い血で Northern Dancer が薄く(7代前に1本だけ)、対ディープインパクトでは成功例の乏しかった A.P.Indy 系。息子のアルアインはサンデーサラブレッドクラブで1億円の募集価格ですから、幼少期から馬のデキは抜群であったことは想像がつきます。ただ、配合は個人的に評価しづらいと感じるものでした。ダート向きに出る可能性があり、切れる脚もないのでは――と。ドバイマジェスティのような配合構成の繁殖牝馬からクラシックホースを作ってしまうディープインパクトの能力にはあたらめて驚かされます。

先に説明したとおり、今回の皐月賞はハイペースで展開したので、スピ−ドの持続力に秀でた血統が上位に並んでいます。アルアインもそうした適性を受け継いでいるでしょう。母が非主流のアメリカ血統で構成され、500kgを超える大柄な馬体、先行抜け出しを得意とするところは、リアルインパクトを彷彿させます。同馬も、ディープインパクトの成功する配合パターンとは無縁でありながら、大きなタイトルを取った馬でした。昨年の皐月賞馬ディーマジェスティも同様です。持続力勝負に強いディープインパクト産駒は、一般的な配合上の公式には当てはまらないものが目立ちます。

今回の皐月賞は、スピ−ドの持続力に秀でたタイプが上位を占めたので、もしダービーが違った流れになると、今回の結果が役立たなくなる可能性があります。速いタイムで決着した年の皐月賞馬はダービーで疑ったほうがよい、とはよく言われるところですが、これは要するに、ハイペースの皐月賞と通常のダービーでは求められる能力が別物であることを示しています。ざっくり単純化して言えば、前者はスピードの持続力、後者はラストの決め手です。1分57〜58秒台で決着した皐月賞は過去5回あり、そのなかで皐月賞とダービーを連勝した馬は15年のドゥラメンテただ1頭。アルアインはこの壁に挑みます。

◎ファンディーナ(1番人気)は7着。一言でいえば牡馬の壁は厚かったということでしょう。緩めの流れしか経験していないところに、過酷なハイペースと一気の相手強化が重なった結果です。それでも直線で見せ場を作り、弥生賞とスプリングSの勝ち馬には先着しているわけですから、次走に期待したいですね。一般的なディープインパクトの成功パターンに当てはまる馬ですから末脚が活きる流れのほうが向いていると思います。



コメント
His Majesty、デインヒル、Ribot(キャサリーンパーの母父)、ディープスカイ×ブライアンズタイムのGraustarkクロスとRibotのスピード持続力が出た皐月賞と捉えれば割と納得できるかもしれません。
  • ゆーな
  • 2017/04/17 9:58 PM
キズナのダービーを見た時から、ノーザン一一強時代の中では、幼駒の育成環境がノーザン一並みでなければ、牡馬クラシックを勝てないんだなあとは思っていましたので、ファンディーナの敗因はそこにあると思いました。
というのも、マイスタイルがワンアンドオンリーに似ていて、鞍上も同じだから馬券を購入したものの外れた一方で、キズナとワンアンドオンリーと同じ環境に育ったクリンチャーが4着に来た事実より、幼駒時代どこで育成されたかも考えないと馬券は取れないのだと痛感しました。
  • Y子
  • 2017/04/18 11:54 AM
アルアインの2代母 Great Majesty と Unbridled は影響力の強い祖先に共通するものが多く、ディープ産駒にしては一風変わったレースぶりもGreat Majestyを通じたGreat Above系 の影響が少なからずありそうです。仮にそうならダートでも相当強そうで、特に緩みないペースで展開する米ダートで走らせてみたい気がします。また種牡馬となれば今を時めくUnbridled系との交配は興味深く、実現可能性はともかく、米国で種牡馬として供用されても面白いのでは、とも想像します。
  • ヒデハヤテ
  • 2017/04/20 6:55 PM
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