トレイルブレイザー、BCターフで4着


ブリーダーズCターフ(米G1・芝12f)に出走したトレイルブレイザーは4着。勝ちに行った分、最後は甘くなってしまいましたが、これは致し方ないですね。あそこで2着狙いの競馬をするわけにはいきません。武豊騎手はよく勝負したと思います。勝ちタイム2分22秒83はブリーダーズCターフのレコード。調整過程でアクシデントがあったなか差のない競馬をしているわけですから健闘したといえるのではないでしょうか。お疲れ様でした。
http://www.youtube.com/watch?v=XJ2TYkbblyo

勝った Little Mike は07年の English Channel 以来5年ぶりに地元アメリカ調教馬の優勝となりました。ターフクラシック(米G1・芝9f)やアーリントンミリオン(米G1・芝10f)などの勝ち星があります。父 Spanish Steps は Unbridled's Song の全弟です。Unbridled 系で In Reality クロスを持つという定番のニックス配合です。
http://www.pedigreequery.com/little+mike




コメント
リトルマイクの父スパニッシュステップスはそうでもないのですが、その全兄アンブライドルズソングは、ミスタープロスペクターの体型を色濃く受け継いだ馬体をしています。
個人的に、ミスプロの体型は長らく疑問の種でした。その疑問とは、現代の米国ダート競馬の大元締めのようなミスプロが、何故あのような細身で胴長の体型をしているのかということです。ミスプロは、祖父ネイティヴダンサーとは首が太いという点を除いて全く似ていませんし、父レイズアネイティヴとも首の太さと胴長というくらいしか共通点がありません。ネイティヴダンサーとレイズアネイティヴの親仔は非常にゴツイ馬体で、レイズアネイティヴの他の後継馬であるアリダーやイクスクルーシヴネイティヴなどは、いずれも父そっくりのパワフルな体型をしています。こう書くと、ミスプロが異端児のように見えますが、父系をさかのぼると、シックル〜アンブレイカブル〜ポリネシアンは、いずれもスマートであまり特徴がなく、ネイティヴダンサーのようなゴツさはありません。ネイティヴダンサーの代で、突如としてゴツくてパワフルな体型になったと言っていいと思います。
それでは、ネイティヴダンサーのパワーの源は何かということになりますが、これは明白で、BMSディスカヴァリーがそっくりの体型をしているのです。太い首差しから胸前の発達した筋肉、そして非常に脚長な点など、実によく似ています。ディスカヴァリーが、ネイティヴダンサーとボールドルーラーのBMSであることの重要性はよく指摘されるところですが、では具体的にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?馬体の面からいえば、それは筋肉量の増大によるパワー化への道を開いたということになります。ディスカヴァリーは、フェアプレイ系ですが、体型的にはまったくの異端児です。フェアプレイ系の体型の特徴は、胴長で首差しが高いという点でしょう。代表的なのはマンノウォーの系統ですが、同じマッチェム〜メルボルン系のハリーオンの系統も同じ体系的特徴を受け継いでおり、マッチェム〜メルボルンのラインの基本的な体型と考えてよいと思います。しかしながら、ディスカヴァリーは、この特徴をまるで受け継いでいません。脚が長いのは父ディスプレイの影響のようですが、それ以外の影響関係についてはよくわかりませんでした。
ディスカヴァリーが、ネイティヴダンサーとボールドルーラーのBMSになったことで、米国ダート競馬の血統的な趨勢は決定的に変わってしまいました。50年代までと、種牡馬ボールドルーラー登場後の60年代以降とでは、体型的に大きな変化がもたらされたのです。それが、筋肉増大の流れです。その筋肉増大の立役者こそ、ディスカヴァリーであったと考えます。父系の流れを無視したネイティヴダンサーの体型に較べると、ボールドルーラーは、シルエット的にはナスルーラを継承しているかに見えます。しかし、ナスルーラの後継馬は、グレイソヴリン、レッドゴッド、ミルリーフ(孫ですが)、プリンスリーギフトなど、どちらかといえばスマートな馬が多いのですが、中ではボールドルーラーの筋肉量は異質であり、それが米国ダート競馬を席捲する原動力になりました。以前にも投稿させていただいたのですが、50年代までの米国ダート馬の体型は、けっしてマッチョとは言えず、マッチョ化が進んだのは60年代以降だと思われます。ディスカヴァリーの孫2頭が、その後の米国ダート競馬を変えてしまったのです。
とはいえ、ネイティヴダンサーとボールドルーラーには大きな違いがあります。ボールドルーラーがリーディングを独走したのに対し、ネイティヴダンサーは1度もリーディグを獲れませんでしたし、レイズアネイティヴにいたってはベスト10入りしたことすらありません(最高は11位)。この違いは、何によるかといえば、それはマムタズマハルの血の有無でしょう。マムタズマハルが入った途端、ミスプロもアリダーも簡単にリーディングを獲ってしまいました。イクスクルーシヴネイティヴにはマムタズマハルの血はありませんが、リーディング獲得の主な要因であるアファームドには、しっかりマムタズマハルの血があります。
つまり、60年代以降の米国ダート競馬を変革した基本的な血統的枠組みとは、「マムタズマハルのスピードをディスカヴァリーの筋肉で増幅させる」というものであったと考えられます。このことは、ボールドルーラー&ミスプロの二大勢力に、唯一対抗できたのがノーザンダンサー系であったことからも明らかです。ノーザンダンサー系にも「マムタズマハル+ディスカヴァリー」のエンジンが標準装備されています。
……ここまでで投稿文字数の限度なのですが、申し訳ありませんが連投をお許しください(続く)
  • toku
  • 2012/11/05 7:57 PM
(続きです)「マムタズマハル+ディスカヴァリー」により、50年代までの伝統的な米国ダート血脈は脇へと追いやられていきますが、なかにはこのエンジンを搭載して巻き返した系統もあります。それが、マンノウォー〜インリアリティ〜リローンチの系統です。インテンショナリーの代でディスカヴァリーが入り、リローンチの代でマムタズマハルを取り込み、アップデートが完了しました。そのおかげで、21世紀になっても、ミスプロ&ボールドルーラー&ノーザンダンサーの主流派を蹴散らしブリーダーズCクラシックを連覇したティズナウのような馬が出せるのだと思います。
興味深いのは、ディスカヴァリーをBMSに持つインテンショナリーが、マンノウォー〜インテントの体型ではなく、ディスカヴァリーそっくりの体型をしていることです。このことからも、ディスカヴァリーの強い遺伝力がうかがわれます。その仔のインリアリティは、ウォーレリック3×3のため、マンノウォー系らしい体型を取り戻しました。しかし、残念なことに、今日のインリアリティの系統からは、あの伝統的な胴長&首高の体型は失われています。シーズティジーの代でノーザンダンサーの血が入ったのが原因のようですが、失われた体型はもはや元に戻ることはなさそうです。
しかし、このマッチェム〜フェアプレイの体型は、意外な場所で復活することになります。その意外な場所こそ、ミスタープロスペクターの体型ではないか、というのが冒頭の疑問に対する自分なりの答えでもあります。まず、レイズアネイティヴが父ネイティヴダンサーより胴長であることについてですが、その原因は、フェアプレイ5×5にあると思います。ディスカヴァリーは、突然変異的にフェアプレイの体型を捨てたかに見えましたが、こうしてフェアプレイの血をクロスさせてみると、その胴長な要素が復活するのですから、血の不思議というしかありません。ミスプロは、母ゴールドディガーにもフェアプレイの血があり、さらにフェアプレイ寄りの体型となりました。父と較べると、よりスマートになり、フェアプレイ的な首差しの高さも復活しています。ディスカヴァリー的なネイティヴダンサーと、フェアプレイ的なミスプロ、その中間がレイズアネイティヴと言えそうです。ミスプロの血を引く馬たちにも、そうした両方の体型的な要素が受け継がれています。フェアプレイ〜ミスプロ的なのは、アフリートやアンブライドルズソングで、逆にディスカヴァリー〜ネイティヴダンサー的なのは、ウォーエンブレムやキングズベストあたりでしょうか。

ポリネシアン
http://saltriverappys.webs.com/ImpressiveFancyPants/Polynesian.jpg
ネイティヴダンサー
http://i805.photobucket.com/albums/yy340/MUDMONT/RACE%20HORSES/NativeDancer-1954200.jpg
ディスカヴァリー
http://umaroda.jpn.org/cgi/up/img/umaroda17206.jpg
http://www.sporthorse-data.com/horse/56064/834/Horse_Discovery-big.jpg
フェアプレイ
http://www.sporthorse-data.com/horse/165066/844/Horse_Fair_Play-big.jpg
マンノウォー
http://i805.photobucket.com/albums/yy340/MUDMONT/RACE%20HORSES/ManOWar3.jpg
インテンショナリー
http://www.sporthorse-data.com/horse/663921/285/Horse_Intentionally-_3big.jpg
インリアリティ
http://www.sporthorse-data.com/horse/613134/840/Horse_In_Reality-big.jpg
ハリーオン
http://www.sporthorse-data.com/horse/191932/851/Horse_Hurry_On-_3big.jpg
レイズアネイティヴ
http://www.sporthorse-data.com/horse/100589/164/Horse_Raise_A_Native-_2big.jpg
ミスタープロスペクター
http://www.sporthorse-data.com/horse/10005075/862/Horse_Mr_Prospector-_2big.jpg
  • toku
  • 2012/11/05 8:16 PM
お邪魔します。
このレース勝ち馬は、JC参戦を予定しているみたいですが、この血統は府中の上り坂に適応できるのか?お聞きしたいです。
キングマンボ系は英セントレジャーを勝てるので、府中の二千〜二千四百は楽勝というように、予想しやすい一方で、アメリカ色の濃いミスプロ系は全くわかりません。
何卒、よろしくお願いします。
  • Y子
  • 2012/11/06 12:12 AM
>toku 様

すでに十分ご存知かと思いますが、補足を。現役時代の Discovery は“鉄の馬”の異名を取り、米63戦27勝の成績を残して米年度代表馬に輝きました。名誉の殿堂入りも果たしています。父としては地味だったものの、母の父としては Native Dancer、Bold Ruler、Intentionally、Hasty Road と Traffic Judge の兄弟、などを出しています。これだけ重要な種牡馬群の母の父になった例はきわめて稀です。悲劇の名牝 Ruffian は、5代以内に Bold Ruler、Native Dancer、Hasty Road が入っているので Discovery を3本持っています。サイアーラインが途絶えているため話題になる機会は少ないのですがきわめて重要な血です。
>Y子様

どちらかといえば平坦コースのほうがいいのでしょうが、府中の坂がこなせない血統ではないと思います。父の全兄 Unbridled's Song 産駒は東京コースを得意にしています。
別に全ての馬にいろんな遺伝子が入ってて浮動するんだから体型が消えたとか復活したとか関係なくね?
単に、似やすい傾向にあるってだけで真逆の馬なんかいくらでも生まれるだろw
  • あいにー
  • 2015/01/22 12:59 PM
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