パーフェクト種牡馬辞典


2012年の米リーディングサイアーは Giant's Causeway


2012年の米年度代表馬は Wise Dan に決定しました。芝マイル路線で活躍した馬で、秋にブリーダーズCマイル(G1・芝8ハロン)を含めてG1を3連勝、年間6戦5勝(2着1回)という成績は立派です。

ただ、アメリカは言うまでもなくダート競馬が中心で、建前はともかく路線の軽重は確かにあります。Wise Dan の受賞に異議を唱えるつもりは毛頭ありませんが、ダート王道路線にそれなりの馬がいれば、おそらくそちらが選ばれていたでしょう。今回の決定の背景には、要するに王道路線のタレント不足があります。

考えてみれば Curlin 以降、誰もが認めるような牡馬のチャンピオンが見当たりません。これはと思う大器が故障したり……といった不運は確かにあるのですが、昔に比べて全体的に粒が小さくなってきているようにも感じます。それ以前から、ヨーロッパにおけるアメリカ産馬のプレゼンス低下は囁かれていました。カルティエ賞の年度代表馬は01年のファンタスティックライトを最後に10年以上も出ていません。

たまたまなのか、あるいは構造的な問題をはらんでいるのか。仮に後者だとすると、生産レベルの低下=血統レベルの低下ということですから、回復するには少々時間がかかるかもしれません。

昨年の種牡馬ランキングは以下のとおり。順位のあとのカッコは昨年順位で、馬名のあとのカッコは生年と父名です。集計は『BloodHorse.com』なども採用している Equineline 社のもの(対象は北米繋養の種牡馬で、集計範囲は北米に加えてヨーロッパ主要国、UAEを含む)。北米に限った集計方法ではまた違ったランキングになります。

1位(4)Giant's Causeway(1997・Storm Cat)    $10,104,608
http://www.pedigreequery.com/giants+causeway
2位(8)エンパイアメーカー(2000・Unbridled)   $10,008,705
http://www.pedigreequery.com/empire+maker
3位(7)Speightstown(1998・Gone West)       $9,989,690
http://www.pedigreequery.com/speightstown
4位(3)Tapit(2001・Pulpit)            $9,305,068
http://www.pedigreequery.com/tapit
5位(2)Smart Strike(1992・Mr.Prospector)     $8,460,973
http://www.pedigreequery.com/smart+strike
6位(5)Malibu Moon(1997・A.P.Indy)        $8,181,674
http://www.pedigreequery.com/malibu+moon
7位(28)City Zip(1998・Carson City)        $8,178,282
http://www.pedigreequery.com/city+zip
8位(1)Distorted Humor(1993・フォーティナイナー) $8,044,321
http://www.pedigreequery.com/distorted+humor
9位(42)E Dubai(1998・Mr.Prospector)       $7,972,476
http://www.pedigreequery.com/el+dubai
10位(34)Lion Heart(2001・Tale of the Cat)     $7,731,601
http://www.pedigreequery.com/lion+heart2

1位の Giant's Causeway は通算3回目のタイトル。Storm Cat 系のエースです。現役時代はアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎に所属し、わずか2ヵ月半の間にG1を5連勝して“アイアンホース”の異名を取りました。ヨーロッパで超一流の実績を挙げたことが信頼性の高い能力検定だった、といえるでしょう。このレベルの実績を挙げたアメリカ産馬はここ最近では見当たりません。アメリカ生産界を引っ張る種牡馬はこのレベルでないと難しいのかもしれません。数の力で順位を維持しているという見方もできますが、裏を返せば丈夫に堅実に走るということでもあります。生産者にとっては頼りになる種牡馬といえるでしょう。日本ではエイシンアポロン(マイルCS)、スズカコーズウェイ(京王杯SC)、エーシンジーライン(小倉大賞典)が代表産駒で、母の父としてはディープインパクトとの配合から Beauty Parlour(仏1000ギニー)が誕生しています。



2位のエンパイアメーカーはゴール直前までトップだったものの、最後に差されて2位。ただし、北米のみの集計ではトップです。2000年以降に生まれた種牡馬でベスト10に入っているのは3頭。そのうち、2位のこの馬は日本へ、10位の Lion Heart はトルコへ売却されており、アメリカにはもういません。これからのアメリカ生産界を担うであろう若くて優秀な種牡馬にかぎって国外に売ってしまっているわけですから、他人事ながらアメリカ生産界の今後に懸念を抱かざるを得ません。逆に、日本はいい買い物をしました。産駒のデビューは来年夏です。



3位の Speightstown も日本向きです。これまで日本で走った6頭中5頭が勝ち上がるという堅実ぶりで、ドスライス(クラスターC)、エーシンジェイワン(OP)、グリフィンゲート(準OP)が出ているように粒も揃っています。



3頭の血統表を見比べると、Giant's Causeway と Speightstown は Storm Cat を持ち、エンパイアメーカーと Speightstown は Mr.Prospctor 系です。アメリカ生産界のドンは、80年代が Mr.Prospector、90年代が Storm Cat なので、それらを血肉としているということです。

血統屋ホームページの「データ」には、血統ファンに楽しんでいただける資料がいろいろ取り揃えてあります。「各国別リーディングサイアー」というコーナーには、日・米・英愛・仏・豪の上位50頭のランキングが掲載されており(09年以降)、血統表のリンクもあるので、現代のトレンドが一目瞭然です。また、父系の国別勢力表というグラフもなかなか興味深いものです。ぜひ一度ご覧いただければ幸いです。2012年分も近々アップする予定ですのでもう少々お待ちください。「世界のG1勝ち馬父系図」は昨年分まで完成しております。表制作・解説は南原文洋氏です。
http://www.miesque.com/data.html



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