母はワカクモ3×4、TCK女王盃優勝馬ハルサンサン
周知のとおりダートグレード競走はJRA勢が圧倒的に強いという傾向があります。しかし、ここ最近、NAR勢がやや盛り返しています。
昨年11月24日に行われた浦和記念(Jpn2・浦和ダ2000m)はボランタスが、12月7日に行われたクイーン賞(Jpn3・船橋ダ1800m)はクラーベセクレタが、年が明けて1月18日に行われたTCK女王盃(Jpn3・大井ダ1800m)はハルサンサンが勝ちました。http://www.youtube.com/watch?v=XsNlZEVdBFE
ハルサンサンは元中央馬ではなく、ホッカイドウ競馬出身でもなく、南関東でデビューをした叩き上げです。血統がおもしろいですね。母ハルワカはワカクモ3×4という牝馬クロスを持ちます。ワカクモは現役時代に桜花賞を勝ち、母として名馬テンポイント、障害の王者キングスポイントを送り出した名牝です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105046/
「血統屋メールマガジン」の第2号(1月11日発行)に、ちょうどこの牝系についてのコラムを書いたところでした。短いものなので全文引用します。
http://www.mag2.com/m/0001305873.html
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■思い出のこの血統(2)フジヤマケンザン
日経新春杯といえばやはりテンポイントを思い出します。1978年、海外遠征の壮行レースとして66.5キロを背負って出走し、4コーナー手前で左後肢を骨折。その瞬間、後ろを走っていたビクトリアシチーの福永洋一騎手は「ボキッ!」という音を耳にしたそうです。わたしは当時、競馬に興味のない小学生でしたが、行きつけの床屋に置いてあった週刊誌にテンポイントの悲劇を伝える記事があり、「へぇ〜」と思いながらページをめくった記憶があります。
血を残すことなく逝ったテンポイントですが、母ワカクモが桜花賞馬という良血なので、近親が活躍しています。テンポイントの半姉にあたるオキワカは、ワカテンザン(きさらぎ賞、皐月賞−2着、ダービー−2着)とワカオライデン(朝日チャレンジC、NARリーディングサイアー)の兄弟を産みました。後者は「ロイヤルスキー×リマンド」のニックスから誕生した傑作です。
これらの半妹にあたるワカスズランは、父がコントライトなので、テンポイントの4分の3同血です。競走成績は1戦0勝ながら良血を活かして繁殖牝馬として成功し、フジヤマケンザンを産みました。牝系図に表わすと以下のとおりです。
ワカクモ(f.1963.カバーラップ二世)
オキワカ(f.1972.リマンド)
│ ワカテンザン(c.1979.マイスワロー)
│ ワカオライデン(c.1981.ロイヤルスキー)
│ ワカスズラン(f.1982.コントライト)
│ フジヤマケンザン(c.1988.ラッキーキャスト)
テンポイント(c.1973.コントライト)
フジヤマケンザンの父ラッキーキャストは不出走馬。それでも種牡馬になれたのは、半姉が天皇賞(東京芝3200m)を逃げ切ったプリティキャスト、母が米最優秀古牝馬に選ばれたタイプキャストという良血だったからです。
フジヤマケンザンは国内で中山記念(G2)など3つの重賞を制したほか、1995年の香港国際C(G2)で海外重賞制覇を成し遂げました。海外遠征を果たせず逝ったテンポイントの一族から、ハクチカラ以来となる海外重賞優勝馬が現れるというのは因縁めいています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1988107011/
マイスワロー、タイプキャスト、コントライト、カバーラップ二世にワカクモのファミリーと、血統はまさに吉田牧場の歴史そのものです。吉田牧場は社台グループの吉田一族と縁戚関係にあります。その後、日本の競馬界は社台グループの天下となりますが、先に海外重賞を制したのは吉田牧場のほうでした。(栗山求)
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ここ20年ほど、日本には海外の良血牝馬がどんどん導入されており、在来牝系は急速に姿を消しつつあります。ワカクモの牝系もフジヤマケンザン以来、目立つ馬はテンジンオーカンとドリーミーオペラぐらいしか出ていなかったので、正直なところこのままフェードアウトしてしまうのではないか……という懸念がありました。
ワカクモ3×4の母から誕生した生え抜きの地方馬がダートグレード競走を勝つ、というのは小さな快挙です。ちなみに、ハナ差2着のカラフルデイズ(父フジキセキ)は社台グループの生産馬でした。
- 2012.01.21 Saturday
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- by 栗山求
既に一昔前の馬ではありませすが、完成時のレース対応力と品位、大衆性は私が見てきたなかで、ルドルフとディープに並ぶものと今でも確信しています。
実現しかけていた欧州遠征でしたが、結果はともかくエルコンドルパサーより二十年早く本格的なキャンペーンが実現したはずでした。
私自身の思い入れもありましたが彼に対する関係者の期待が非常に高かったのだと感じています。
栗山さんにとっては馴染みの薄い時代なので取り上げ辛いと思いますが、私にとってはまさに競馬の原点であるテンポイントが取り上げられて頂いたので、嬉しさの余り即反応してしまいました!(笑)