パーフェクト種牡馬辞典


Mr.Prospector クロスのアドマイヤムーン産駒はダート向きの傾向


日曜日は中京で高松宮記念(G1・芝1200m)が行われますが、中山ではダート重賞のマーチS(G3・ダ1800m)が組まれています。G1クラスは出てきません。これから伸びようとする馬と、頭打ち気味の馬によるハンデ戦ですから、過去10年間で6番人気以下が14頭も連対しているように、戦力比較が難解です。

フレッシュな魅力では8枠16番のジョヴァンニが一番でしょう。芝で4戦して芽が出ず、ダートに転じると未勝利戦から4連勝でOPクラスに上がってきました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102625/



エリザベス女王杯(G1)で3着に食い込んだピクシープリンセス(父ディープインパクト)の半弟です。父アドマイヤムーンは芝連対率18.1%、ダート連対率10.5%、という数字が示すとおり芝向きの種牡馬。ダート重賞に産駒を送り込むイメージは湧かないのですが、母オータムメロディーは「Kingmambo×Sadler's Wells」で Nureyev≒Sadler's Wells 3×2、さらに世紀の名牝 Fall Aspen のファミリーですから、重厚かつパワフルな構成です。

Mr.Prospector クロスを持つアドマイヤムーン産駒は、勝率、連対率、複勝率ともダートが芝を上回ります。同クロスを持つキングカメハメハ産駒がダート向きに出るのと同じです。

未勝利戦から4連勝で準OPを卒業、という例はあまり見られません。ダートで最下級条件からの連勝といえば、ナムラタイタンが6連勝、エーシンモアオバーが5連勝を記録したことがありますが、両者とも重賞初挑戦で3、5着と敗れ、連勝が途切れました。やはり重賞の壁は厚い、ということです。ジョヴァンニがここで連対すればかなりの大物です。

ちなみに、芝では現在バーバラという馬が同様に未勝利戦から4連勝中です。同馬はディープインパクト産駒のスプリンター。ジョヴァンニはアドマイヤムーン産駒のダート馬ですから、いずれもその種牡馬の専門分野外で勝ち続けているのがおもしろいところです。




底光りするスタミナ、アドマイヤラピス


 中山金杯で骨折したアドマイヤコスモス(父アドマイヤマックス)が3月21日に死亡しました。2ヵ月半にわたって治療を続けてきましたが立ち直れませんでした。中山金杯でも◎を打ったように能力を評価していた馬だったので残念です。


アドマイヤコスモスは福島記念の勝ち馬。兄弟にはアドマイヤホープ(全日本2歳優駿、北海道2歳優駿)、アドマイヤフジ(日経新春杯、中山金杯2回)がいます。


アドマイヤコスモスを評価していたのは母アドマイヤラピスの影響も大きいですね。同馬は現役時代に馬券で追いかけていたほど気に入っていた馬でした。


「Be My Guest×Ela-Mana-Mou×Val de Loir」というコテコテのステイヤー血統。どう見ても日本の馬場への適性などなさそうですが、アドマイヤラピスは軽い芝にもうまく馴染んでいました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1992110153/



血統のなかで強調したいのは母の父 Ela-Mana-Mou です。Snurge(英セントレジャー)、Double Trigger(アスコットGC)、Eurobird(愛セントレジャー)など多くの名ステイヤーを送り出しました。ホワイトマズルの母の父でもあります。スタミナの源泉は Alycidon≒ハイハット4×2・5。Hyperion と Donatello をひっくり返して成立したこの2つの血を近い世代に集め、スタミナを固定しています。Alycidon は20世紀屈指の名ステイヤーです。



アドマイヤラピスは4歳夏まで2000m以下のレースを使われていました。体力がつくのを待っていたのかもしれません。長距離に出てきたら相当やれるだろうと思っていたので、その路線に行ってからは毎レース買っていました。牝馬ながら嵐山S(OP・芝3000m)を勝ち、ステイヤーズS(G2・芝3600m)で2着となってステイヤーとしての資質を証明しました。


先に述べたように、アドマイヤラピスは繁殖牝馬としても重賞勝ち馬を3頭送り出して大成功を収めています。きわめて良質な異系のステイヤー血統なので、何を交配しても走りますし、孫の代からも活躍馬が出始めています。もうひとつ、名牝バレークイーンと血統構成が近いことも、成功にまつわる何がしかのカギを握っているのかもしれません。



アドマイヤラピスの今年の2歳馬は、アグネスタキオンを父に持つ牝馬。タキオンと Be My Guest の組み合わせといえばジェルミナル(フェアリーS、桜花賞−3着、オークス−3着)が出ているので期待できるでしょう。





Chief's Crown のスタミナ


 Danzig は現役時代3戦全勝。そのいずれもが後続を引き離す圧勝でした。あまりに速すぎて脚がもたなかったという、Raise a Native(4戦全勝)に似たタイプです。YouTube でその雄姿を見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=XIXV-mHds5w


見てのとおり圧倒的なスピードを武器とし、デインヒルや Green Desert のラインがヨーロッパやオセアニアで大勢力を築いています。ただ、この系統がすべてスピードタイプかというとそうではなく、なかにはスタミナ色の強いラインも育っています。


その代表が Chief's Crown。現役時代にアメリカで7つのG1を制した名馬で、米2歳牡馬チャンピオンに選出されています。10ハロンのトラヴァーズS(米G1)やマールボロC招待H(米G1)も制しており、距離延長を苦にしないタイプでした。昨日のエントリーで取り上げたキャノンシュートとメイショウスザンナの両方に含まれる血ですが、そこまで説明が回らなかったので本日のエントリーで補足したいと思います。
http://www.pedigreequery.com/chiefs+crown



母 Six Crowns は「六冠」の意。その父 Secretariat は米三冠馬で、母 Chris Evert はNY牝馬三冠馬。合わせて六冠、というわけです。旺盛な活力を誇る素晴らしい名牝系です。


Miss Carmie(f.1966.T.V.Lark)
 Chris Evert(f.1971.Swoon's Son)NY牝馬三冠
 │Six Crowns(f.1976.Secretariat)
 │ Chief's Crown(c.1982.Danzig)BCジュヴェナイル
 │ クラシッククラウン(f.1985.Mr.Prospector)フリゼットS
 │  クラウンピース(f.1997.Seattle Slew)
 │   リーチザクラウン(c.2006.スペシャルウィーク)
 │                       マイラーズC
 Carmelize(f.1972.Cornish Prince)
 │アビ(f.1995.Chief's Crown)
 ││ディープスカイ(c.2005.アグネスタキオン)日本ダービー
 │Royal Dragon(c.1998.デインヒル)独2000ギニー
 All Rainbows(f.1973.Bold Hour)
  All Dance(f.1978.Northern Dancer)
  │タップダンスシチー(c.1997.Pleasant Tap)ジャパンC
  Winning Colors(f.1985.Caro)ケンタッキーダービー
   ゴールデンカラーズ(f.1993.Mr.Prospector)クイーンC2着
    チアフルスマイル(f.2000.サンデーサイレンス)
                        キーンランドC


Chief's Crown の母の父は米三冠馬 Secretariat。いうまでもなく現代のアメリカ競馬における最強馬です。その母の父 Princequillo の影響を強く受けたタイプなので、血統的なキャラクターはスピードよりもむしろスタミナ方面に傾いています。そして芝・ダートを問いません。Storm Cat、A.P.Indy、Gone West といった名種牡馬の母の父となっていることから、その存在感は年々強まっているように感じます。


Chief's Crown のサイアーラインは以下のように発展しています。


Chief's Crown(1982)
  Grand Lodge(1991)デューハーストS
  │ Sinndar(1997)凱旋門賞、英ダービー、愛ダービー
  │ │ Youmzain(2003)ヨーロッパ賞
  │ グランデラ(1998)愛チャンピオンS
  Key of Luck(1991)ドバイデューティーフリー
  │ アラムシャー(2000)愛ダービー、キングジョージ
  エルハーブ(1991)英ダービー
  チーフベアハート(1993)BCターフ
    マイネルキッツ(2003)天皇賞・春


デインヒルや Green Desert のラインとは明らかに様相が異なります。ですから、Chief's Crown を母方に持つ馬は、距離をこなすタイプが少なくありません。2000ベストのアグネスタキオン産駒でありながらディープスカイは日本ダービーを勝ち、短距離ベストの Crafty Prospector 産駒でありながらアグネスデジタルは天皇賞・秋を勝ちました。ディープスカイの母は Chief's Crown の3代母 Miss Carmie を4×3で持つという美しい配合です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005101358/



土曜中山の水仙賞(3歳500万下・芝2200m)に出走するゴールデンクラウンは、2代母の父が Chief's Crown。半兄ゴールデンハインドはクロフネ産駒でありながら芝3000mの万葉S(OP)を勝ちました。ダートの未勝利戦を勝ち上がって臨む一戦なので人気はありませんが、おそらく距離延長は歓迎でしょう。昨日のエントリーで取り上げたキャノンシュートとメイショウスザンナの双方に配合がよく似ています。狙ってみたい馬です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106152/







ダート戦で注目したいスパイキュール産駒


 あまり数は多くないのですが、ダート戦で注目すべき成績を挙げているのがスパイキュール産駒です。現在、3世代が競走年齢に達し、ダート戦で連対率19.7%(芝では3.6%)という成績。これはかなり優れた数字です。たとえば、スマートファルコンやエスポワールシチーの父ゴールドアリュールはダート戦の連対率が19.2%です。


スパイキュールは現役時代10戦7勝、ダート戦に限れば7戦全勝と負け知らずでした。OP特別を5馬身差で圧勝したのを最後に骨折のため現役生活に別れを告げたのですが、無事ならばダート重賞をいくつか勝っていたでしょう。サンデーサイレンス産駒としては屈指の砂巧者でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2000101557/



母はクラフティワイフ。カンパニーやトーセンジョーダンなどの活躍でここ数年急速に注目度が高まっているファミリーです。


 クラフティワイフ(f.1985.Crafty Prospector)
   ブリリアントベリー(f.1990.ノーザンテースト)
   │ ニューベリー(c.1998.フジキセキ)
   │ レニングラード(c.1999.トニービン)
   │ カンパニー(c.2001.ミラクルアドマイヤ)
   ビッグショウリ(c.1991.ノーザンテースト)
   エヴリウィスパー(f.1997.ノーザンテースト)
   │ ダークメッセージ(c.2003.ダンスインザダーク)
   │ トーセンジョーダン(c.2006.ジャングルポケット)
   スパイキュール(c.2000.サンデーサイレンス)
   バトルバニヤン(c.2004.ジャングルポケット)


産駒成績はこのところ好調です。先週日曜日、中山9Rの霞ヶ浦特別(1000万下・ダ1800m)をドレミファドンが勝ちました。出遅れて最後方から進み、3コーナーから大外をマクって突き抜けるという強い競馬でした。ゲートさえまともに出れば準OPでも即通用するでしょう。


地方競馬では10月以降に限っても、ホクセツサンデーが楠賞(園田ダ1870m)と園田金杯(園田ダ1870m)を連勝したほか、スマートインパルスが勝島王冠(大井ダ1800m)を、ナムラダイキチがサラブレッド大賞典(金沢ダ1900m)を勝ちました。中央のベルモントレーサーは門別競馬場に遠征して北海道2歳優駿(Jpn3・ダ1800m)で2着に食い込んでいます。ちなみに、ホクセツサンデーとスマートインパルスはいずれも母の父がタマモクロスです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100948/



交配している牝馬の質があまり良好とはいえないなかでこれだけの成績を挙げるのですから優秀ですね。種付け頭数は、初年度の06年から71頭→57頭→52頭→65頭とコンスタントに50頭以上の牝馬を集めていたのですが、10年は25頭と激減し、11年はわずか9頭。これだけ走っているので来年は大幅に上昇するのではないでしょうか。11年の種付け料は受胎条件で20万円、出産条件で30万円。もし来年据え置きならコストパフォーマンス的には最高だと思います。


今週は土曜中山8Rの1000万下(ダ2400m)にパクサとヘリオスの2頭が出走します。チャンスは十分あるでしょう。





Glorious Song を経由した Halo クロス


 12月7日のエントリー「メイショウクオリアと配合が似ているチェインブラッド」のコメント欄に、ウンポコロコ様から質問がありました。

「Glorious Song が母系に入った時の Halo のクロスは、威力が大きい(活躍馬が多い)ように思うのですが、配合面で何か特別な理由はあるのでしょうか?」

たしかに、Glorious Song を経由した Halo クロスの活躍馬は頻繁に目にします。たとえば、ダノンシャンティ、メイショウクオリア、フレールジャック、サンディエゴシチー、コスモネモシン、アサクサデンエンなど。海外では Shamardal が出ています。

Glorious Song の全きょうだいの Devil's Bag、Angelic Song についても同様です。ファインチョイス、ダノンバラード、ウイングレット、ディアチャンス、マッハヴェロシティ、メイショウレガーロなど。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007105709/


Glorious Song は Halo の代表産駒の1頭です。カナダとアメリカで通算34戦17勝の成績を残し、加年度代表馬、加最優秀古馬牝馬(2回)、米最優秀古馬牝馬に輝きました。Devil's Bag(米最優秀2歳牡馬セン馬)、Saint Ballado(米リーディングサイアー)の全姉です。繁殖牝馬としても優秀で、Singspiel、Rahy、グランドオペラ(メイセイオペラの父)の母となりました。
http://www.pedigreequery.com/glorious+song


その父 Halo は、Sun Princess≒Mahmoud 4×3が配合構成の核心部分です。したがって、スピードがあり切れます。どちらの血も現代スピード血脈の祖 Lady Josephine の一族です。


配合構成の核心部分を刺激する、というのは配合の基本セオリーです。Halo の代表産駒は、サンデーサイレンス、Glorious Song、Devil's Bag、Sunny's Halo、グッバイヘイロー、ジョリーズヘイローなど、そのほとんどが Mahmoud クロスを持っています。父が持つ Sun Princess≒Mahmoud 4×3を継続することが成功の鍵なのでしょう。

Glorious Song(=Devil's Bag)の場合、単なる Mahmoud クロスではなく、2代母 Miss Swapsco が Mahmoud≒Mirza 2×3という4分の3同血クロスを持っています。したがって、より大きな効果が得られたのではないでしょうか。
http://www.pedigreequery.com/miss+swapsco


要するに、Glorious Song の配合は、父 Halo が持つ Sun Princess≒Mahmoud 4×3をしっかりと強化しているので、この馬を経由した Halo クロスがうまくいっているのではないか……と推測します。

今週はファインチョイスが阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に、ダノンバラードが中日新聞杯(G3)に出走します。どちらも争覇圏にあるのでおもしろそうです。





強すぎるクロスの活かし方


 今年のアルゼンチン二冠牝馬 Balada Sale(通算6戦5勝)は、3代母 La Bambuca が Bambuca 2×2という特殊な牝馬クロスを持ちます。
http://www.pedigreequery.com/balada+sale



クロスさせる血は極力優れたものでなければいけません。劣った血の強いクロスは逆効果となります。クロスさせた Banbuca という牝馬は、アルゼンチンの大レースを勝ちまくり、19戦13勝という成績を残しました。生産者はその優れた資質を子孫のなかに再現したいと願ったのでしょう。


Bambuca 2×2の La Bambuca は、繁殖牝馬としてエストレジャス大賞ジュニアスプリント(亜G1・ダ1000m)を制した Leyden、同レース2着の La Baraca を送り出しました。冒頭に記した Balada Sale は後者の孫です。


La Bambuca の系統からはもう1頭、エストレジャス大賞ジュヴェナイルフィリーズ(亜G1・ダ1600m)の勝ち馬 Miss Bamba が出ています。2着に6馬身差をつける圧勝で、通算2戦全勝ですから、どれだけ強い馬だったのか分かりません。
http://www.pedigreequery.com/miss+bamba



Balada Sale も、アルゼンチンオークスに相当する前走のセレクシオン大賞(亜G1・ダ2000m)を11馬身差で勝っているので、これも相当な器でしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=XwGqphMQ1Iw


Bambuca 2×2をルーツとするこのファミリーの活力はいまだに衰えていません。強すぎるクロスは競走馬としてうまく行かないことが多く、2×2で成功したのは凱旋門賞を勝った女傑 Coronation ぐらいでしょうか。こうした特殊な凝縮は母方に潜って花開く傾向があるように思います。


たとえば、70年代末から80年代前半にかけて地方競馬を賑わしたタガワ四兄弟(タガワエース、タガワキング、タガワテツオー、タガワリュウオー)は、その2代母にトキツダイヤという異様な配合構成を持つ馬を抱えていました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0034f9/



オートキツ≒ハッピーダイヤ1×2であり、トキツカゼ=クモノハナ≒ヘーレンソール2×2・3でもあります。トキツダイヤの娘コーホールは父母双方がほとんどゆかりのないアウトクロス馬で、どういう遺伝の加減かは分かりませんが、何を交配しても地方競馬の重賞勝ち馬を出すという名繁殖牝馬となりました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1977102855/



血統表を眺めると、2代母トキツダイヤの部分にのみ特殊な凝縮があります。4頭いる祖父母の1頭なので血量的には4分の1です。笠雄二郎さんの「4分の1異系配合」という考え方は、こうした配合パターンをすっきり説明することができます。詳しくは『サラブレッド配合史』と『血統論』をご参照ください。
http://www.miesque.com/c00001.html


強度のクロスについては、『栗山求 Official Website』の「Works」にある「黎明期の血統」にて考察しています。初出は92年春なので約20年前です。やや長いのですがこの項の締めくくりとして引用したいと思います。
http://www.miesque.com/motomu/square9.pdf


 ……黎明期の配合の特徴を一言で表現すれば「インブリードの繰り返し」であり、もちろん「アウトクロス」ではない。なぜならアウトクロスが有力だとすれば、いつまでもアラブやタークをはじめとする輸入馬の流入は止まならなかったはずで、内国産馬の資質向上はもちろんサラブレッドという種の成立もありえなかったはずである。
 現代のサラブレッドは長年にわたる淘汰によって均質化し、各馬の能力的ばらつきは小さくなっている。それに比べると当時は「優れた馬」と「そうでない馬」との差が大きかった。それこそ上等な輸入アラブから馬車馬まで繁殖に供されていたからである。こうした状況で走る馬を生産しようとした場合、優れた血を単純にインブリードさせることがもっとも手っとり早く効果的だった。Old Morocco Mare のケースはその極端な例といえる。
 1×2、2×1という配合は現代から考えるといかにも異様だが、英国の競馬評論家ピーター・ウィレットはその著書『THE CLASSIC RACEHORSE』のなかでこう述べている。革命的な成果を挙げた18世紀の牛や羊の品種改良がそうであったように、当時の馬産家たちは繁殖牝馬の能力向上のためなら近親交配をためらわなかった、と。事実、当時の血統表を見ると、2×2、2×3といった現代ではほとんど見ることのできないインブリードが頻繁に試みられていたことがわかる。
 血脈が多様化し、競走馬の能力が均質化した現在では、強度のインブリードを施したとしても、その効果を昔ほどには期待できないかもしれない。成熟した血脈のなかでは、アウトクロスやアウトブリードなどその他の手法も有効なのである。
 ただ、現在のアメリカのように血脈の多様化が極端に進むと、いずれ固定化の重要性も再認識されることだろう。サラブレッドの配合の歴史というものは、長い目で見ると「固定化」と「多様化」の繰り返しであり、この間を振り子のように往ったり来たりしながら、種全体として徐々に前進していくのだと思われる。〔引用終わり〕





イモータルヴァースの血統


 これが円高効果なのか、この秋はハイレベルな欧州馬が日本にやってきています。3歳牝馬のイモータルヴァース(Immortal Verse)は欧州マイル路線のトップクラスの1頭です。http://www.pedigreequery.com/immortal+verse



周知のとおり今年の欧州マイル路線は Frankel という怪物が牛耳り、それ以外の馬はどうしても影が薄くなりがちですが、イモータルヴァースは2走前のジャックルマロワ賞(仏G1・芝1600m)で断然人気の Goldikova を差し切り、ビッグネームの仲間入りを果たしました。このときはサプレザ(Sahpresa)にも先着しています。
http://www.youtube.com/watch?v=0NzSuVQ3Kpw

その前走、ロイヤルアスコットのコロネーションS(英G1・芝8f)を後方一気で差し切った際は、同じ3歳牝馬が相手ということもあり、展開や馬場に恵まれた部分があったのかな、という気がしていました。
http://www.youtube.com/watch?v=5Wvqu5Hzl4Q

初の古馬挑戦となった前述のジャックルマロワ賞は、鞍上のGOサインに応えて抜け出すときの脚が目を瞠るほど速く、展開など関係なくこれは相当な器であると認識を改めました。

父 Pivotal は Nureyev 系の名種牡馬で、英愛サイアーランキングでは一桁台が定位置。ベスト5に入ることも珍しくありません。スピードが最大の武器で、スプリンターやマイラーを多く出していますが、母方にスタミナを入れると Sariska(英オークス、愛オークス)のようなクラシックディスタンス向きの産駒も出します。引き出しの多い種牡馬といえるでしょう。
http://www.pedigreequery.com/sariska2



イモータルヴァースの母 Side of Paradise は「Sadler's Wells×Mill Reef」というクラシックタイプ。しかし、イモータルヴァース自身は Sariska のようにはならず、適正距離はマイルに落ち着きました。母は名種牡馬ラストタイクーンの4分の3同血です。

Pivotal 産駒も、その父 Polar Falcon 産駒も、日本に買われて走った数頭は凡庸でしたが、04年の京王杯スプリングC(G2・芝1400m)に出走したUAEのフィートソーファスト(Feet So Fast)は8番人気ながら3着に食い込みました。前肢の掻き込みの強い大型馬ながら日本の馬場にうまく対応しました。
http://www.pedigreequery.com/feet+so+fast



イモータルヴァースは、フィートソーファストとは比べものにならない大物なので、馬場適性さえあればまとめて面倒をみるだけの力はあるでしょう。堅い馬場を走った経験がなく、今回好走するには持ち時計を大幅に詰める必要があります。また、Nureyev≒Sadler's Wells 3×2も軽い馬場に向くクロスではありません。

しかし、勝負どころで繰り出す切れ味は非凡の一語。重たいフットワークではないので、馬場が渋って外差しのコンディションにでもなれば十分適応できるのではないかと思います。買い目から外すのはリスキーです。







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