パーフェクト種牡馬辞典


Blushing Groom の忘れられた全兄


 先週の日曜日、小倉の未勝利戦(ダ1700m)で、タヤスツヨシ産駒のハヤブサという馬が初勝利を挙げました。六社特別(1000万下・芝1600m)を勝ったツーピースの半弟です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102801/



この血統には面白い血が入っています。


ベイラーン(牡・1971年生・父 Red God)


「TARGET frontier JV」と「netkeiba.com」の5代血統表を見ると、母馬の欄が空白となっています。そこに入る馬名は Runaway Bride。父は Red God ですから、要するに Blushing Groom の全兄弟です。



現役時代はフランスでG3を2勝し、引退直後の1975年に輸入され、77年にわずか6歳で死亡しました。供用されたのは76年の1年のみ。もちろん海外に残した産駒はいません。こうして人知れず消えていく輸入種牡馬は珍しくないのですが、この馬はふたつの点で際立った特長がありました。


ひとつは、先に述べたとおり Blushing Groom の全兄にあたる良血であること。ベイラーンが輸入されたとき、Blushing Groom はまだデビュー前でした。もし生まれる順番が違っていたら――仏2000ギニー(G1)やグランクリテリウム(G1)など5つのG1を制した全弟が先に生まれていたら――値段が跳ね上がって日本に入っていたかどうか怪しいと思います。似たような例としてはホープフリーオンがあります。同馬は Alydar の全兄で、輸入されたとき弟はデビュー前で、G1を3勝した半妹 Our Mims も頭角を現す前でした。これらの導入を決めた方がどなたかは存じ上げませんが、慧眼だったと思います。


もうひとつは、産駒成績がきわめて優秀だったこと。「JBISサーチ」によれば、馬名登録されたベイラーン産駒はわずか32頭で、そのなかからネオキーストン(福島記念)、テルノホープ(金鯱賞)、ホースメンヤマト(シンザン記念−3着)、スターフライト(百万石賞)、ファンタスティック(上山優駿樹氷賞)が現れました。もし無事に長生きしていれば……と思わずにはいられません。せめて5世代ぐらい産駒を残していれば、我が国の生産界に十分な影響を及ぼすことができ、これほど低い知名度に甘んじることもなかったはずです。


産駒うち、福島記念を勝ったネオキーストンが種牡馬となりました。そして、南関東の重賞で繰り返し入着したカゴヤツヨシ(黒潮盃−2着、東京王冠賞−3着、東京ダービー−4着、羽田盃−5着、東京大賞典−5着)の父となりました。89年に3歳だったので女傑ロジータの同期です。カゴヤツヨシが走っていた当時、ベイラーンの血を受け継ぐネオキーストンの子、という希少性からすでに知る人ぞ知る存在でした。いつも差して届かずというじれったい馬でしたね。


ネオキーストンが13年間の種牡馬生活で送り出した産駒はわずか43頭。このうち種牡馬となったものはなく、繁殖牝馬となった馬もごく少数です。92年生まれのサリーキーストンが血を繋ぎ、これがツーピースとハヤブサの2代母となっています。


Nijinsky と Blushing Groom はニックスで、ラムタラ、Kahyasi、ファンタスティックライト、Sky Beauty、Quest for Fame、Pursuit of Love、Peaks and Valleys など多くの名馬が誕生しています。ツーピースとハヤブサの母フジリューには Nijinsky とベイラーンの組み合わせがあります。ベイラーンは Blushing Groom の全兄ですから、上記のニックスがそのまま適用できるはずです。「エアダブリン×ネオキーストン」という地味な組み合わせながら上々の繁殖成績なのは、このニックスに秘密がありそうです。





向正面でマクリ一発、オークス馬の息子ノーブリー


 ■日曜小倉5Rの新馬戦(芝1800m)は、出遅れて後方を追走した★ノーブリー(4番人気)が向正面でマクって先頭に立ち、そのまま押し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=PIQOT-0zkIk


藤岡康太騎手が派手なマクリで勝負を決めました。一瞬、サンディエゴシチーの東京スポーツ杯2歳Sがオーバーラップしたのですが、今回は最後まで脚がもちましたね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1994109467/



母はオークス馬ウメノファイバー。これにアドマイヤムーンですから、東京競馬場のG1ホース同士の配合です。母はこれまで目立った活躍馬は出していませんでした。産駒が新馬戦を勝ったのは初めてです。アドマイヤムーン産駒はこのレースに大量4頭の産駒を送り込んでいました。12月4日の未勝利戦(芝1800m)でサマールナが2着となってから、芝1800m以上では13戦連続で馬券圏内に入っていませんでした。これは距離の壁というよりクラスの壁という側面もあったと思います。


ウメノファイバーは函館の新馬戦を勝ち上がったときに、たまたま競馬場にいて馬券を取らせてもらい、乏しい旅の資金を大幅に増やしてくれた感動からそのままお気に入りとなった馬でした(笑)。もちろんそのときは翌年のオークス馬になるとは想像もしていませんでした。「サクラユタカオー×ノーザンディクテイター×シルバーシャーク×セダン」ですから、血統の古さは否めません。エンドスウィープとサンデーサイレンスを併せ持つ父アドマイヤムーンは現代血統の最新のトレンドなので交配相手として悪くないでしょう。今回は奇策がハマった面もあるので正攻法でどれだけやれるか見てみたいものです。先述のとおり東京競馬場のG1ホース同士の配合ですから、直線の長い中央開催でもやれるはずです。ただ、本質的には平坦向きかもしれないので、直線が平坦な京都開催ではとくに面白いと思います。


◎スターマイン(1番人気)は2着。『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」で取り上げ、血統屋の『種牡馬別好配合馬リスト マンハッタンカフェ編』では◎を打った馬です。能力は示したので次走はキッチリ決めてくれそうです。





土曜日に東京競馬場のイベントに出演します


 1月28日(土)、東京競馬場のセンターコートで行われるイベントに出演します。以前は「オープン型レーシングセミナー」と「リアルタイム情報ステーション」の2本立てでしたが、それらが発展的解消をして新しい形態になるようです。時間はだいたい11時30分ごろから16時30分ごろまで。司会は竹山まゆみさん、共演は井内利彰さん、細江純子さんです。




母はチリのニックス配合、破壊力抜群パララサルー


 ■土曜中山5Rの未勝利戦(芝2000m)は、積極的にハナに行ったソルレヴァンテ(2番人気)が逃げ切りました。


4コーナーで手応えが悪くなり、後続に飲み込まれそうになりましたが、直線に入ってまた伸びるという味なレースぶり。重賞に何度か出走したバイタルスタイル(父スペシャルウィーク)の半弟ですから、ちょっといいところがありそうです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009104317/



父キングカメハメハは「Nothern Dancer+Seceretariat」の構成を持つ血と相性が良好。ローズキングダム(ローザネイ)、ロードカナロア(Storm Cat)、ベルシャザール(セクレト)、エオリアンハープ(シークレットシェアラー)、ビンテージチャート(Storm Cat)などが代表例です(カッコ内は Nothern Dancer+Seceretariat の血)。本馬は2代母の父が Storm Cat なので、今週土曜日のシルクロードS(G3)に出走するロードカナロアと似ています。


母の父トニービンは、当コースで行われる皐月賞で2勝(ヴィクトリー、キャプテントゥーレ)、2着1回(ドリームパスポート)と好成績を残しています。しかも、勝った2勝は今回と同じく逃げ切り。トニービン自身は東京コースを得意としましたが、息子のジャングルポケットは中山コースが得意ですし、母の父としても同様です。代が遠ざかると小回りコース向きの持続力を増す働きがあるようです。荒れ馬場も得意でしょう。


■土曜中山9Rの菜の花賞(3歳500万下・芝1600m)は、中団追走のパララサルー(1番人気)が馬場中央を鋭く突き抜けました。
http://www.youtube.com/watch?v=-cDoCegFT1Q


昨年9月の新馬戦でゲンテンの2着に敗れてから、これで2連勝です。休み明けの前走が強い競馬だったので、今回も1番人気に推され、期待を裏切ることなく勝ってOP入りを果たしました。現3歳世代のディープインパクト産駒は、これで9頭目のOP入りです。混戦を抜け出す勝負強さ、末脚の破壊力は見どころ十分で、小回り専用というフットワークでもないので、いろいろなコースにしっかり適応できるでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106489/



母の父 Stuka は現役時代に米西海岸のビッグレースであるサンタアニタH(G1)を勝ち、引退後は南米チリで07年にリーディングサイアーとなっています。2代母の父 Staegcraft はオペラハウスの4分の3同血。今回、雨で渋った馬場を苦にしなかったのはこのあたりの影響かもしれません。Sadler's Wells 系なので大レース向きの底力も伝えます。


母タンタスエルテは現役時代にアルトゥーロリヨンペニャ賞(G1・芝1600m)を勝ちました。初子のパララサルーがこれだけ走ったので、今後の繁殖生活が楽しみです。「Stuka×Stagecraft」の組み合わせはかなり成功しており、09年のチリ年度代表馬 Last Impact やその全弟でチリダービー馬 Amor de Pobre など7頭のG1馬が出現しています。この組み合わせから誕生した馬は計49頭と多く、同じ種馬場に繋養されているといった事情でもあるのかもしれませんが、14%強のG1ホース出現率ですから素晴らしいの一語。ニックスといっていいと思います。


母の父に Caerleon が入るディープインパクト産駒には、ジョワドヴィーヴル、トーセンレーヴ、ボレアス、ダノンシャークなどがいます。また、Sir Ivor≒Successor 5×5(Royal Charger≒Nasrullah、Mahmoud、Princequillo が共通)も切れ味を伝えそうなクロスなので好感が持てます。現時点ではジョワドヴィーヴルやジェンティルドンナを追いかける第二勢力といった位置づけですが、トライアルで力関係が変わってくるかもしれません。そんな期待を抱かせる良馬です。







ダイワメジャーの成功パターンに合致するカレンブラックヒル


 ■土曜京都4Rの新馬戦(ダ1800m)は、抑えきれない手応えで2番手を進んだ◎エリモフラッシュ(1番人気)が直線半ばであっさり抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=zEiwAMrHdJQ

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想を転載します。

「◎エリモフラッシュは「ブライアンズタイム×パントレセレブル」という組み合わせ。エリモブライアン(ステイヤーズS)とは4分の3同血の関係にある。母の父にパントレセレブルが入って軽快さはなくなったがダ1800m向きのパワーとスタミナは十分。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100013/


ブライアンズタイム産駒らしいパワフルな走りです。エクセルマネジメント(旧えりも農場)生産のブライアンズタイム産駒は、エリモダンディー、エリモブライアン、エリモマキシムなど記憶に残る馬が多く、とくにエリモダンディーは配合的にも大好きな馬でした(マヤノトップガン、チョウカイキャロルと同じく母方に Vaguely Noble を持つ)。3歳秋から本格化の兆しを見せ、98年の日経新春杯を鮮やかに差し切って勝ったのですが、そのわずか2週間後に急死してしまいました。中長距離でG1を獲れる器だったといまも思っています。

エリモフラッシュとエリモブライアンは、母の父がパントレセレブルかマルゼンスキーか、というだけの違い。パントレセレブルは現役時代に凱旋門賞を5馬身差でレコード勝ちした名馬ですが、種牡馬としては軽快さや決め手に欠けるタイプでした。このあたりの重さがダート向きの適性となって表れているのでしょう。

■土曜京都6Rの新馬戦(芝1600m)は、じわっとハナに立った▲カレンブラックヒル(3番人気)が後続3馬身差をつけて逃げ切りました。3着は大差。
http://www.youtube.com/watch?v=J446rwyBXss

重馬場をゆるみのないペースで逃げて、最後の2ハロンは11秒7−11秒7ですから、3着以下がちぎれてしまったのは当然です。1400mの通過タイムは1分23秒6。これは同日準メインの花見小路特別(4歳以上1000万下・芝1400m)の2着馬と同タイムです。

ダイワメジャー産駒の馬場状態別連対率(芝)は以下のとおり。

良  24.2%(198戦48連対)
稍重 31.0%(29戦9連対)
重  34.8%(23戦8連対)
不良 28.6%(7戦2連対)

まだサンプルは少ないものの、馬場が渋ると成績が上向きます。

母チャールストンハーバーはケンタッキーダービー馬 Grindstone の娘。繁殖牝馬としてこれまで目立つ産駒は出していませんが、Grindstone の代表産駒 Birdstone と同じく母の父が Storm Bird 系で、配合的にやや似ている点がセールスポイントでしょうか。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106230/


Grindstone の母の父は Drone。ダイワメジャーはダンシングブレーヴとニックスの関係にあり、この組み合わせからトーセンベニザクラ、ダローネガ、オメガホームラン、ダイワミストレスといった活躍馬が出ています。ダンシングブレーヴの母の父は Drone。つまり、カレンブラックヒルはダイワメジャーとダンシングブレーヴのニックスから誕生した馬たちと同じポイントを強調した配合です(Halo≒La Menina≒Drone 3・5×4)。

ダイワメジャーの母スカーレットブーケと、2代母の父 Storm Cat は配合構成がやや似ているので、この関係もいいところがあるかもしれません。ただ、母方に Storm Cat を持つダイワメジャー産駒でいまのところ勝ち上がっているのは、メジャーアスリート、ドリームリーグとダートのほうがいいタイプのみ。Grindstone が入っていることを併せて考えると、カレンブラックヒルの適性はダート寄りなのかなと考えて▲しか打てませんでした。重い芝も向いたのかもしれませんが、予想以上のポテンシャルでしたね。次走、良馬場の芝でどれだけやれるか楽しみです。






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