パーフェクト種牡馬辞典


ジャパンC外国馬の血統診断(後)


 ■ミッションアプルーヴド Mission Approved(牡7歳・父 With Approval)

マンハッタンH(米G1・芝10f)の勝ち馬で、アメリカの芝路線では常連といえる存在です。アメリカの芝10fのG1連対馬は、一昔以上前のジャパンCではよく馬券になりました。ルグロリュー、ペイザバトラー、オード、ゴールデンフェザント、パラダイスクリーク……。しかし、このパターンは最近ダメですね。最後に馬券になったのは02年の2着馬サラファン。アメリカの中距離芝路線の停滞と、日本のレベル上昇で勝負にならなくなりました。力量的に厳しいと思います。
http://www.pedigreequery.com/mission+approved



父 With Approval はカナダの三冠馬。当初はダートを中心に走っていましたが、Caro 産駒ということでやがて芝向きの素質が見いだされ、4歳以降はほぼ芝専用。ブリーダーズCターフ(米G1・芝12f)では In the Wings の2着と健闘しています。

日本ではエイシンキャメロン(デイリー杯3歳S、アーリントンC)、マルターズスパーブ(フラワーC)を出しました。ジャパンCには05年に孫のベタートークナウ Better Talk Now が出走しましたが12着に敗れています。

ミッションアプルーヴドの配合は、レースぶりどおり軽快さに欠ける重たいもので、日本向きとはいえません。

■サラリンクス Sarah Lynx(牝4歳・父 Montjeu)

フランスでポモーヌ賞(G2・芝2500m)を勝ち、牝馬のトップクラスがそろうヴェルメイユ賞(G1・芝12f)で4着なったあと、大西洋を渡ってカナディアン国際S(G1・芝12f)を4馬身差の圧勝。これが評価されて来日しました。

カナディアン国際組は毎年のように来日しますが苦戦続きです。昨年も1着ジョシュアツリー Joshua Tree、2着モアズウェルズ Mores Wells がそろい踏みしたものの本番はそれぞれ10着、13着。最後に馬券になったのは96年の勝ち馬シングスピール Singspiel ですからはるか15年前のことです。

カナディアン国際Sは、70〜80年代は世界を代表する大レースのひとつでしたが、90年代はその余光でかろうじて地位を保っている状態で、00年代以降は語るべきものがありません。

シングスピールはカナディアン国際Sを勝ったあと、まだレベルが高かった時代のブリーダーズCターフ(G1・芝12f)でピルサドスキーの2着と健闘し、この路線で世界最高レベルにあることを証明しました。それに比べるとサラリンクスは物足りません。
http://www.pedigreequery.com/sarah+lynx


「Montjeu×デインヒル」という配合は重いですね。大雨で馬場がぐちゃぐちゃになれば上位に紛れ込む余地が出てきます。

■シャレータ Shareta(牝3歳・父 Sinndar)

前走の凱旋門賞は15番人気とまったくノーマークの存在。しかし、2番手追走から直線に入って先頭に立ち、デインドリームには交わされたものの、後続馬の追撃を抑えて2着に粘りこみました。3着が Snow Fairy、4着が So You Think なので価値があります。

1着デインドリームは11番人気、2着シャレータは15番人気、という大波乱の原因は、いうまでもなく馬場状態です。例年のコンディションとは大きく異なる堅い馬場だったため、高速決着に適性のある馬が大駆けを果たしました。

シャレータの父 Sinndar は、アガ・カーン四世殿下が生み出した傑作の1頭で、凱旋門賞、英ダービー、愛ダービーなど8戦7勝の成績を残しました。道悪の愛ダービーを9馬身ちぎる一方、パンパンの良馬場だった凱旋門賞を2分25秒8というレース史上2位のタイム(当時)で勝つという万能型の名馬でした。その父 Grand Rodge は堅い馬場を得意とするマイラーだったので、そうした特徴も受け継いでいたのでしょう。
http://www.pedigreequery.com/shareta


Grand Lodge のスピードは Secretariat≒Sir Gaylord 3×3がその源泉ですが、シャレータはこの部分を継続発展させる形で Habitat 4×4としています。また、Secretariat と同じく Nasrullah と Princequillo で構成された Mill Reef を4×5で持ちます。Shinndar のなかのスピードを担う血を積極的に強化した配合であり、これが高速決着に適応した原因ではないかと思われます。

同じくアガ・カーン四世殿下が生産した Shawanda(愛オークス、ヴェルメイユ賞)とは4分の3同血の関係にあります。Shawanda の愛オークスは5馬身差の圧勝で、勝ちタイム2分27秒1は現在も破られていないレースレコード。この血統は堅い馬場に対する適性があります。


シャレータの2着は“たまたま”ではなく、同じ馬場コンディションで同じメンバーを走らせれば、何度やっても上位に食い込むでしょう。トビが大きいので東京コースにもフィットしそうです。切れ味勝負では分が悪く、ルメール騎手のペース判断が勝負を左右する鍵となりますが、展開次第では上位に粘ることも十分考えられます。





ジャパンC外国馬の血統診断(前)


 十数年ぐらい前までは、ジャパンCがやって来るたびに、過去の優勝馬の国別内訳表といったものが新聞に載っていました。各国の優勝回数が拮抗していたため、どの国が強いのか、あるいは日本の競馬に向いているのか、といったことが関心事でありえたわけです。

しかし、ここ10年以上、そうした表は目にした記憶がありません。地元日本馬が断然強すぎて、そうした資料の意義が失われてしましました。

ときどき懐かしく思い出すことがあります。強い外国馬への畏怖と憧れ。日本馬がんばれ!という純粋な情熱。トウカイテイオーが日本馬として7年ぶりに優勝を果たした92年のレースは、東京競馬場がひとつになったかのような高揚感がありました。その前年までにジャパンCは11回行われ、日本馬の優勝はわずか2回。勝つことの難しさゆえにジャパンCは高根の花だったのです。

01〜10回……8頭
11〜20回……4頭
21〜30回……2頭

これは、ジャパンCの実施回数を3期に分けて、外国馬がそれぞれ何頭優勝したかを示した表です。10回ごとに外国馬の優勝は半分ずつ減っていることが分かります。もしこの表のとおりにこれからも推移するなると、31〜40回は1頭しか優勝馬が出ないことになります。

ただ、今年は久々に強い外国馬が上陸しました。アルファベット順に見ていきたいと思います。戦績などの細かな情報は新聞雑誌等にあふれているので省略します。

■デインドリーム Danedream(牝3歳・父 Lomitas)

凱旋門賞を5馬身差のレコードタイムで圧勝した直後、旧ブログに以下のように記しました。血統表を補いつつ転載します。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/10/danedream-e5a2.html

「Danedream の父 Lomitas は、一昨年のエリザベス女王杯に来日(4着)したシャラナヤ Shalanaya の父。このほか、Silvano(アーリントンミリオン−米G1)、Belenus(独ダービー−独G1)などを送り出し成功しています。Lomitas の母の父 Surumu は、旧来の重苦しいドイツ血統とは肌合いを異にする現代的な特長を持ちます。それはすなわち堅い馬場を苦にしないということです。詳しくは10年4月22日のエントリー「勢力を拡大するドイツ血統」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/post-5cf1.html

母 Danedrop はキンシャサノキセキの母ケルトシャーンと構成が似ています(近い世代で Northern Dancer、His Majesty、Lady Berry が共通)。


母の父にデインヒルが入り、自身は Ribot 5×5を持つので馬力や底力は十分ですが、Nijinsky や High Top は堅い芝もOKなので、凱旋門賞のレースレコード(2分24秒49)を出せる下地はあったと思います。たとえば、05年のジャパンCを2分22秒1のレコードで勝ち、日本の堅い芝で新たな才能を開花させたイギリス馬アルカセットは、母チェサブラナが Niniski×High Top という組み合わせ。Danedream も近い世代に Niniski と High Top を持ちます。 」
http://www.pedigreequery.com/danedream


Danedream に更新されるまでレコードだったのは、97年にパントレセレブルが樹立した2分24秒6。この年の3着馬はドイツ産の牝馬 Borgia でした。その2代父は Surumu で、この馬はテスコボーイの甥にあたり、引用した文章に記したように堅い馬場に対する適性があります。ちなみに、95年のジャパンCを制したランド Lando も Surumu の孫です。

その3年後、2分25秒8とまたもや早いタイムが出ましたが、このときの1着馬 Sinndar、2着馬 Egyptband は、いずれも High Top の息子 Top Ville を持っています。このラインも堅い馬場を苦にしません。

Danedream には、Surumu も High Top も含まれています。時計の速い決着に対応できることは凱旋門賞で証明済み。東京競馬場の芝に苦しむことはないでしょう。ただ、33秒台前半の極限の切れ味を要求されるレースになった場合、サンデーサイレンスの血を持った馬に対抗できるかというと、そこまでの瞬発力は期待できないのではないかと思います。母の父がデインヒルですから、本質的にはハイペースの粘り勝負に適性があるでしょう。天皇賞・秋のような流れなら相当強いと思います。昨年のダービーのような極端な上がり勝負になるとやや不安があります。





ダート新馬戦に強いウォーエンブレム産駒のフレイムオブピース


 ■日曜東京5Rの新馬戦(芝1400m)は、好位を追走した★ラミアプリマベーラ(16番人気)がゴール前で差し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=f7tPititT6Y

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は★◎△で馬連2万4150円、3連複19万3490円的中。雨の影響で先週の馬券はやや難しかったのですが、たまにはこういう配当も引っ掛かってくれます。

ラミアプリマベーラは18頭中16番人気ですから、まったく人気がありませんでした。それでも注目したのは配合的に渋った馬場をこなすだろうと思ったからです。母の父フレンチグローリーは力のいる馬場に滅法強い Sadler's Wells の子。半兄デストラメンテ(父アドマイヤコジーン)は不良馬場のむらさき賞(準OP・芝1800m)を勝ったように道悪の鬼でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009103330/


クビ差2着の◎バサラヴォーグ(3番人気)は、結果的に先頭に立つのが早すぎましたね。馬が気を抜いてしまいました。

■日曜東京6Rの新馬戦(ダ1400m)は、逃げ馬をマークする形で進んだ◎フレイムオブピース(2番人気)が直線で5馬身突き抜けました。
http://www.youtube.com/watch?v=b2d8-yNqtRU

予想は◎▲△で馬単1360円、3連単8840円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想を転載します。

「◎フレイムオブピースは『ウォーエンブレム×サンデーサイレンス』。この組み合わせからはキングスエンブレム(シリウスS)が出ており、新馬戦では連対率50%と抜群の成績を挙げている。稽古でもまずまずの好時計を見せており、順当に力を発揮すれば勝ち負けに持ち込めるだろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105950/


母ブローザキャンドルの半兄にはテレグノシス(NHKマイルCなど重賞3勝)がいます。予想文に記したキングスエンブレムとは、2代母の父がノーザンテーストである点まで同じです。

周知のとおり父ウォーエンブレムは牝馬に興味を示さないという難しい問題を抱えているため、産駒数がきわめて少ないのですが、能力は非常に高く、JRAで走ったわずか40頭の産駒から、秋華賞を勝ったブラックエンブレムをはじめ5頭の平地重賞勝ち馬を送り出しています。このほかシビルウォーがブリーダーズGC(Jpn2)と白山大賞典(Jpn3)を勝ち、本日行われる浦和記念(Jpn2)でも圧倒的人気(前日発売で単勝1.0倍)を集めています。

40頭中16頭(つまり40%)が準OP以上に出世しているのですから驚異的です。気性がうるさくムラ駆けタイプである、という欠点もありますが、アルゼンチン血統やオーストラリア血統も入るユニークな構成なので、おそらく母の父としてもおもしろい存在となるでしょう。

ダート新馬戦の連対率はこれで62.5%(8戦5連対)。この条件に出てきたら逆らえません。





見た目以上に底力がありそうなポレイア


 ■日曜京都3Rの新馬戦(ダ1400m)は、中団から外をマクって進出したゴールデンウィナー(2番人気)が逃げ馬に競り勝ちました。
http://www.youtube.com/watch?v=pSM7awJf_l4

ダイワメジャー産駒のダート連対率は19.4%。芝に出走経験のある馬が初めてダート戦に出た場合は30.8%です。単勝回収率は123%。まずまず馬券になっています。勝ったゴールデンウィナーは芝で4着→4着のあとダート戦に臨み、単勝1.4倍のナムラアピアを破りました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102601/


母スターエンジェルはゴールデンジャック(重賞2勝、オークス2着)、スターリングローズ(JBCスプリントなど重賞6勝)の全妹にあたる良血で、先日の武蔵野S(G3)を勝ったナムラタイタンは、その母ネクストタイムがこれらの全きょうだいと4分の3同血です。パワー型の名牝系の血を受け継いでいるので、やはりダート適性は高いといえるでしょう。


今回は2着との差が4分の3馬身しかありませんが、2着と3着の間が8馬身と大きく開いており、勝ちタイムの1分25秒3もまずまず優秀。昇級戦でも通用しそうです。

■日曜京都6Rの新馬戦(ダ1800m)は、好位追走の○ポレイア(4番人気)が楽々と抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=Wz4gvVxNxbY

周知のとおりゴールドアリュール産駒はダートに強く、新馬戦でも走ります。したがって、配合が良好で稽古でも動いている馬は軽く扱うことはできません。本馬もそんな1頭でした。これまでにデビューした5頭の姉妹のうち、これで3頭が新馬戦を勝ったことになります。このあたりは母の父 Rubiano が伝える仕上がりの早さでしょうか。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009101362/


本馬の母リベラノはダンスチャーマー(ジャングルポケットの母)の半妹なので、本馬とジャングルポケットはイトコ同士ということになります。本馬は近い世代にサンデーサイレンス、Skillful Joy、Nureyev を併せ持つので、「ジャングルポケット×サンデーサイレンス」の馬(たとえばアヴェンチュラ、ジャガーメイルなど)と配合構成が似ています。


「ジャングルポケット×サンデーサイレンス」は底力が武器なので、ポレイアは見た目以上に底力のあるタイプかもしれません。昇級戦でも怖い1頭です。





昇級戦でも即通用ガーネットチャーム


 ■土曜京都5Rの新馬戦(芝1600m)は、△エーシンフルマーク(3番人気)が好スタートから逃げ切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=Deym_bQjZ64

レースの際、京都競馬場には強い雨が降っており、馬場コンディションは不良。これが明暗を分けました。エーシンフルマークは掻き込みの強いパワフルなフットワークで、マイペースに持ち込んで後続を寄せ付けませんでした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100232/


母エイシンレマーズは阪神3歳牝馬S(G1)2着馬。アメリカで繁殖入りし、現在は日本に戻っています。母の父 Phone Trick は早熟で一本調子なところが見られるパワー型の血です。2歳馬ながら米年度代表馬に輝いた Favorite Trick が代表産駒で、日本における産駒成績を見ると、芝の不良馬場では2戦2勝。稍重〜不良馬場に範囲を広げてみても連対率50%です。極悪馬場をこなしたのはこの血の影響が大きいのではないかと思います。
http://www.pedigreequery.com/phone+trick



◎ジェンティルドンナ(1番人気)は2着。全姉ドナウブルーが同日最終レース(芝1800m)を圧勝しているように道悪適性はあります。もちろん良馬場でも走れるので次走は確勝でしょう。

■土曜東京4Rの新馬戦(芝1400m)は、出遅れて後方追走となった◎ガーネットチャーム(2番人気)が直線大外から豪快に差し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=qxNAdyUpwZQ

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎ガーネットチャームは『ファルブラヴ×サンデーサイレンス』。この組み合わせは新馬戦で連対率31%と走っており、東京コースに限ると43%と抜群の成績。ファンタジーS(G3)を制したアイムユアーズと配合構成がやや似ており、このぐらいの距離の2歳戦は合っている。手堅く上位争いができるはず。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106579/



予想文に記したとおりアイムユアーズと配合構成が似ています。ガーネットチャームは Fairy King≒Nureyev 2×3で、母方にサンデーサイレンスが入ります。アイムユアーズは Fairy King≒Sadler's Wells 2×4で、母方にサンデーサイレンスが入ります。「Fairy King≒Nureyev」の4分の3同血クロスはパワフルなので、雨を含んだ馬場では頼りになります。


父ファルブラヴは牡馬よりも牝馬を走らせる傾向があるフィリーサイアーで、産駒の収得賞金を多い順に並べると、1位から10位までを牝馬が独占しています。また、これまでに新馬勝ちした17頭中11頭が牝馬です。したがってファルブラヴ牝馬、というだけで安心感があります。素質の高さを感じさせる馬なので昇級戦でも即通用しそうです。







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