パーフェクト種牡馬辞典


『サラブレ』4月号発売


 3月13日に『サラブレ』4月号(株式会社エンターブレイン)が発売になりました。高松宮記念、桜花賞、皐月賞、そしてドバイワールドCデーの展望などが盛りだくさんの内容ですが、そのなかで「現役馬の血統七不思議」という記事を執筆いたしました。カラー4ページの特集企画です。「なぜこんなに走る!? 父ステイ×母父マックの謎」など、7つの血統ミステリーについて栗山求の考えを記しました。ぜひ一冊お手元にどうぞ。




スプリングSはグランデッツァ


 離れた第二集団でレースを進めた▲グランデッツァ(3番人気)が、直線で先に抜け出した◎ディープブリランテ(1番人気)を残り50mで捉えました。
http://www.youtube.com/watch?v=izPi1NBJBkg


相手はディープブリランテ1頭、と見定めてレースを進めたミルコ・デムーロ騎手が上手かったですね。外も伸びる馬場になっていたので、レーススタイルを崩さず自然な形で勝てたのもよかったと思います。一貫してレースレベルの高いところを使ってきて、馬場も展開も関係なく崩れていないわけですから能力は確かです。昨年暮れのラジオNIKKEI杯2歳S(3着)は筋肉痛で調整に狂いが生じ、本調子ではありませんでした。共同通信杯を勝ったゴールドシップとは2戦して1勝1敗。きさらぎ賞と若葉Sを連勝したワールドエースとはまだ対戦していません。この2頭に比べてグランデッツァは出遅れ癖がなく(デビュー戦は出遅れましたが)、いい位置でレースを進められるという強みがあります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105989/



桜花賞馬マルセリーナの半弟で、母マルバイユはアスタルテ賞(仏G1)など3つのマイル重賞を制した名牝。『競馬王のPOG本』では「競合覚悟で上位指名すべき5頭」と「栗山ノート」にリストアップし、血統屋の電子書籍『種牡馬別好配合馬リスト アグネスタキオン編』では◎評価で牡馬のトップに据えました。この本では望田潤さんが◎、桑原拓三さんが○評価ですから、どの角度から切っても悪くは見えないという好配合馬です。


母マルバイユが伝えるスピードは、Hyperion がベースとなっているので、大レース向きの底力があります。2代母 Hambye には Ribot のクロスもあります。こういう血はアグネスタキオンと合います。半姉マルセリーナ(父ディープインパクト)は Burghclere≒Welsh Flame 3×4で、弟グランデッツァは Alcide≒Electric Flash 5×5。Welsh Flame は Electric Flash の娘なので、2頭とも似たようなポイントを強化しています。



アグネスタキオン産駒における Alcide 周辺の強化は、鈍重さを帯びるリスクを抱えるので、全体の血脈の質を十分吟味する必要があります。構わず走ったということはマルバイユのスピードの質が優れていることの証明でしょう。


新馬戦で2着に敗れたあと、ブログに「本領を発揮するのは中央開催の芝1800〜2000mだと思います」と記しました。ダービーよりも皐月賞に向くタイプです。同じアグネスタキオン産駒で4年前に優勝したキャプテントゥーレとは、タイプは違うものの能力的に劣るとは思えません。流れが向けば勝つ可能性も十分あるでしょう。


アグネスタキオン産駒の3歳牡馬はグランデッツァが孤軍奮闘している状態で、ほかにめぼしい馬は見当たりません。ラストクロップとなる現2歳世代は、3歳世代よりはメンバーがそろっている印象があるので、活躍が期待できると思います。


1番人気のディープブリランテは、体が絞れたのはよかったのですが、行きたがったりモタれたりと、相変わらず操縦の難しい馬です。スタートから一生懸命走ってしまうタイプなのでタメが利かず、それがゴール前の甘さにつながっています。精神的な問題なので短期で矯正できるかというとなかなか大変かな……という気はします。


△アルフレード(2番人気)は12着。久々や道悪という悪条件を考慮しても負けすぎですね。86年以降、前走が10着以下の成績で皐月賞で連対を果たしたケースは一度もありません。





阪神大賞典はギュスターヴクライ


 ごく稀に「信じられないものを見た」と思わせるレースに出くわすことがありますが、今回はまさにそれですね。ビックリしました。長く語り継がれる伝説のレースとなるでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=mj2F9CHWYSY


◎オルフェーヴル(1番人気)の陣営にとっては衝撃的な敗戦であり、かなり深刻な事態です。このままでは凱旋門賞挑戦も白紙になりかねません。手に負えない激しい気性はステイゴールド産駒の強みでもあり弱みでもあります。この馬に関しては、辛抱強いトレーニングによって気性面が成長が促され、制御可能なものになっているとばかり思っていました。今回の予想コメントには「相手関係云々ではなく自分自身との闘いであり、これに勝てれば結果はついてくる」と記しました。気性難を乗り越えて四冠を達成したあとに、こうもアッサリと自分自身に敗れ、自爆してしまうとは想像できませんでした。休み明けで気持ちが昂るところがあったにしても残念です。


冒頭の「信じられないものを見た」というのは、いうまでもなくアクシデントが起こったあとのリカバリーです。どんな馬であろうとあれだけのロスがあれば惨敗するのが普通です。G1馬と未勝利馬が戦っているわけではありません。重賞戦線で活躍する強豪同士のなかで、およそ十数馬身のロスを巻き返して半馬身差の2着まで追い上げたのですから、池添騎手がいうところの“怪物”という形容が適切ですね。その昔、アメリカのフランク・ショーターというマラソン選手がレース途中に便意を催し、コースアウトして用を足したあと、レースに戻って優勝したことがありました。ふとそれを思い出しました。敗れたとはいえ、オルフェーヴルが真に規格外の存在であることを、これまでのどのレースよりも雄弁に物語っていたと思います。


今回の事態を受けて、天皇賞・春に向かうかどうか、池江調教師はもう一度考えることになったようです。もし出てくれば、やはり1番人気になるのは間違いないところですが、何倍ぐらいの単勝オッズになるのか興味深いですね。3倍はつかないけれど2倍はつく……といったあたりでしょうか。予想の印を打つとしたら◎か無印です。


トップクラスが集まるレースで、怪我や落馬以外に1番人気馬がアクシデントを起こして敗れた例といえば、90年のブリーダーズCスプリントや10年のヨークシャーオークスなどが挙げられます。前者は Dayjur がコース上に伸びた影に驚いてジャンプして勝利を逃し、後者は Sariska がゲート内で膠着してスタートしませんでした。今回の阪神大賞典はそれらに並ぶ“世にも奇妙なレース”となりました。
http://www.youtube.com/watch?v=AyKTUujfBio
http://www.youtube.com/watch?v=K5an_VD-YCk


勝った▲ギュスターヴクライ(3番人気)は、父ハーツクライ、母ファビラスラフインというジャパンC2着馬同士の配合。母は90年代以降に走った牝馬のなかではトップクラスの実力を備えていました。96年の秋華賞を勝った際の1分58秒1というタイムはいまだにレースレコードとして残っており、ジャパンCで連対した日本調教馬のなかでは唯一の3歳牝馬でもあります。繁殖牝馬としては、コンスタントに勝ち馬を送り出すものの重賞勝ち馬が出ない、という点でレッドチリペッパーと双璧の存在でしたが、一足先に重賞勝ち馬の母となりました。


父ハーツクライは芝2500m以上で連対率38.1%と素晴らしい成績を挙げています。芝3000m以上に限れば5戦3連対。長距離戦では最も信頼できる種牡馬の1頭です。2代母 Mercalle は牝馬ながらカドラン賞(仏G1・芝4000m)を制したステイヤーでした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102952/






若葉Sはワールドエース


 雨上がりでラチ沿いの伸びがよく、前が止まらない馬場になってはいましたが、◎ワールドエース(1番人気)の福永騎手は腹をくくっていつものように後方から。トラックバイアスを味方にしぶとく粘った△メイショウカドマツ(2番人気)を力でねじふせました。
http://www.youtube.com/watch?v=wODdDHjEZOw


『netkeiba.com』の「No.1プロ予想」に提供した予想は◎△○で馬単850円、3連単4060円的中です。予想文を転載します。


「◎ワールドエースは『ディープインパクト×アカテナンゴ』という組み合わせ。母は独オークス(G2)3着馬で、その半弟には英仏でG1を3勝したドイツの雄マンデュロがいる。ディープインパクトの牝系は英王室が育んだことで知られる良血で、これが底力とスタミナの根拠となっている。本馬はこの部分をハイライト≒マリアポリス5×5で強化した上で、ドイツ血統の新風を取り入れ、ノーザンダンサー5×4で締めるという綺麗な配合。前掛かりの流れになりそうなメンバー構成で、ラストの末脚で勝負が決まる公算大。となると、きさらぎ賞で抜群の決め手を発揮したこの馬が勝つ可能性が高い。多少馬場が渋っても問題ない。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106353/



予想文に記した展開予想はアテが外れましたが、前が残りやすい馬場コンディションでも差し切ったのですから、着差以上に実力差があったレースだと思います。


ホースマンが目標とするレースはまずダービー。これを勝つためにどうすればいいか、という視点で逆算しながら馬を作っていきます。誰が乗ってもどんな乗り方をしても勝ち続ける馬というのはほとんど存在せず、レースを教えながら持ち味を最大限に発揮できるスタイルを固めていき、大一番への準備を着々と整えていきます。


明らかに前残り馬場だった1月の若駒Sで、あえて後ろからレースを進めたのも、馬群のなかで我慢をするというスタイルを徹底させるためでした。調教時に引っ掛かり、折り合い面の懸念が頭をもたげてきたので、それを矯正するために陣営が選択した戦法です。超スローペースにハマって敗れはしましたが、当ブログで「大きな成果を得るための必要経費のようなもの」と記したとおり、意味のある敗戦だったと思います。前走のきさらぎ賞は折り合い面に進境が見られました。


こういう経緯があるだけに、今回、前残り馬場でも頑固にワールドエースのスタイルを崩さなかったのは、先の大目標を見据えた上で当然の選択といえるでしょう。レース後の福永騎手のコメントは以下のとおり。


「今日の芝は前残りばかりだったんで、厳しいレースにはなるだろうなと思ってましたけど、よく差し切ってくれたと思います。今日は道中、上手に走るってことが最大のテーマでした。またちょっと新しい課題も見つけられましたし、修正して大一番に臨みたいなと思ってます」


「新しい課題」とはスタート。もし仮に皐月賞で出遅れ、後方から外を追い上げる競馬になったら厳しいでしょう。お父さんのディープインパクトは皐月賞のスタートで躓き、序盤は最後方からレースを進め、それでも余裕をもって差し切るという眩暈がするような楽勝ぶりでした。今年の牡馬クラシック戦線はディープインパクトの年のような“断然一強”の構図ではありません。横並びのなかでワールドエースがやや抜け出しているかなという混戦ですから、本番での立ち回りがうまく行かなければ負けるシーンは十分考えられます。また、近場の阪神への輸送で8キロ馬体が減っていたのも好ましい材料ではありません。力のいる馬場で走ったことが消耗につながらなければいいなと思います。


ただ、仮に皐月賞で負けたとしても、それなりの形を作れば、大目標のダービーでは有望だと思います。脚質は直線の長い東京向きでしょう。血統的にも Lando(ジャパンC)を出した Acatenango が母の父ですから、東京コースの2400mに不安はありません。いい形で5月27日の本番を迎えてほしいものです。





今年の2歳はネオユニヴァース産駒が復活?


 「復活」などと書くと、まるで現在落ち込んでいるかのようですが、じつはそのとおりです。先週終了時点のサイアーランキング(総合)は11位と振るわず、JRAの勝利数は前年同時期の32勝から半減して16勝にとどまっています。


初年度にロジユニヴァース(日本ダービー)とアンライバルド(皐月賞)が出現し、2年目にはヴィクトワールピサ(皐月賞、有馬記念)がドバイワールドCを勝つという偉業を成し遂げました。


ここまではよかったのですが、3年目の現4歳世代で重賞を勝った馬はオールアズワン(札幌2歳S)のみで、4年目の現3歳世代はさらに厳しく、重賞で馬券になった馬がいないどころか2勝馬はチャーチクワイア(土曜日のフラワーCに出走)のみ。物足りない成績といわざるをえません。


種牡馬は3〜4年目の産駒が谷間になりがちです。1、2年目は現役時代の残光によってそれなりの存在感を示し、繁殖牝馬も集まりますが、3年目となると新顔の種牡馬に繁殖牝馬が流れ、4年目はその傾向がさらに強まります。時期的にも初年度産駒がデビューする直前なので、様子見となって種付け頭数が減ることも珍しくありません。


ですから、ネオユニヴァース産駒がこの時期に成績を落とすのは、ある意味セオリーどおりのことです。たとえば、今年の夏にデビューするディープインパクト産駒は、“中だるみゾーン”の3世代目ですから注意が必要です。なかにはアグネスタキオンのように3世代目が大成功(ディープスカイ、キャプテントゥーレ、リトルアマポーラなど重賞勝ち馬が7頭出現)した種牡馬もいるので、絶対的な法則というわけではありませんが、一般的に見てそうした傾向が見られるということです。


デビューを控えたネオユニヴァースの2歳世代は、質・量ともに充実しており、このラインナップなら再び浮上してくるのではないかと思います。産駒数191頭は過去最高。3歳世代の106頭に比べて86頭も増えています。ロジユニヴァースとアンライバルドの二枚看板が重賞戦線で大活躍していた時期の種付けですから当然でしょう。


3月9日に発売された『パーフェクト種牡馬辞典 2012−2013』(自由国民社)では、ネオユニヴァースの配合解説はわたしの担当でした。2歳馬のおすすめ配合2頭を選ぶために産駒の配合を1頭ずつ吟味したのですが、取り上げたい馬がたくさんいすぎて参りました。


ネオユニヴァースは牡馬のほうが走るタイプの種牡馬です。収得賞金上位10頭中、牝馬はイタリアンレッドのみ。激しい気性を伝えるので、繊細な傾向が見られる牝馬はカリカリしすぎてうまくいかないのかもしれません。頭の片隅に置いておきたい事実です。







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