パーフェクト種牡馬辞典


ケンタッキーダービーの前哨戦


 5月5日(土)のケンタッキーダービーまで1ヵ月を切りました。各地で主要な前哨戦が消化されているので、鮮度が落ちないうちに軽く触れておきます。今週土曜日(4月14日)にアーカンソーダービーとブルーグラスSが行われるので、それは来週あたりにまた。


■3月31日、フロリダ州ガルフストリームパークで行われたフロリダーダービー(米G1・ダ9f)。ここは大本命馬 Union Rags で無風かと思われたのですがまさかの3着。少頭数でしたが序盤で位置取りを悪くしてしまい、ゴール前で差を詰めたものの届きませんでした。
http://www.youtube.com/watch?v=fwtPBb6bcxo


勝った Take Charge Indy は逃げ切り勝ち。「A.P.Indy×デヒア」という組み合わせは3年前のケンタッキーダービーで1番人気に推されて惨敗した Friesan Fire と同じ。Take Charge Indy は父 A.P.Indy と相性のいい Fappiano を母方に抱え、母 Take Charge Lady は2つのG1を含めて重賞を8勝した名牝なので悪くないですね。ケンタッキーダービーを勝つ血統的な重厚さという点ではギリギリセーフといったところでしょうか。ただ、今回はすべてがうまく行った面もあるので、本番では Union Rags が巻き返す可能性を上に取りたいですね。
http://www.pedigreequery.com/take+charge+indy



■4月7日、カリフォルニア州サンタアニタで行われたサンタアニタダービー(米G1・ダ9f)。直線で3頭の叩き合いとなり、2番人気の I'll Have Another が1番人気の Creative Cause をねじ伏せました。
http://www.youtube.com/watch?v=tS6KDCvl_tg


勝った I'll Have Another はG2→G1と重賞連勝。西海岸の総大将となりました。父 Flower Alley はトーセンラーの半兄です。血統全体を見渡すと Sadler's Wells、Vaguely Noble、Roberto、Pleasant Tap、Sea-Bird など、重厚な血が十分すぎるほど詰め込まれているのでケンタッキーダービー向きです。
http://www.pedigreequery.com/ill+have+another2



■4月7日、ニューヨーク州アケダクトで行われたウッドメモリアルS(米G1・ダ9f)。好位追走の1番人気 Gemologist が早めに抜け出し、2番人気 Alpha の追い上げを封じました。
http://www.youtube.com/watch?v=leXGwhh9vEY


勝った Gemologist はこれで5戦全勝。重賞は2勝目です。血統的なキーポイントは母の父に入る Mr.Prospector でしょう。ケンタッキーダービーはハイペースの10ハロン戦ですからスタミナが求められます。周知のとおり Mr.Prospector は優れたスピードを伝え、子の代でケンタッキーダービーを勝ったのは Fusaichi Pegasus のみで、孫の代で勝ったのも Unbridled、サンダーガルチ、ウォーエンブレムの3頭ですから、あれだけの大父系を築いたわりには少ないと思います。上記の4頭はいずれもスタミナ血統を合わせて距離をカバーしていたのですが、Gemologist の配合を見るとギリギリという印象ですね。2代母 Sulemeif はスティルインラブやローブデコルテの2代母でもあり、底力に関しては侮れないものがあるので、そのあたりに期待でしょうか。
http://www.pedigreequery.com/gemologist2






阪神牝馬Sはクィーンズバーン


 強気にハナを主張したクィーンズバーン(11番人気)が後続の追撃を抑えて逃げ切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=yMpGhkZ3Enc#t=1m30s


勝ちタイム1分21秒9は、レース開催が12月から4月に移行した06年以降では最も遅いタイム。今週は良馬場でしたが、雨続きだったこの春の天候が馬場を痛めています。前走のうずしおSはカトルズリップスにハナを譲ったせいで不甲斐ない競馬となったので、今回はスタートから行く気満々。道中でカトルズリップスに絡まれても譲る気はなく、強気に突っぱねてそのまま逃げ切りました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103175/



ワイルドソルジャー(名古屋グランプリ)、ダノンカモン(マイルチャンピオンシップ南部杯−2着)の半妹。スペシャルウィーク産駒は、ブエナビスタという例外的な超大物を除けば、パンパンの良馬場の切れ味勝負になると苦しく、時計の掛かる馬場コンディションで先に行って流れ込むというレースパターンが向いています。ちょうど去年の今ごろ、阪神競馬場に場所を移して行われたダービー卿チャレンジトロフィーでブリッツェン(8番人気)が逃げ切りました。同馬はスペシャルウィーク産駒。今回のクィーンズバーンのレースぶりを見ていてそのシーンを思い出しました。荒れ馬場、単騎逃げ、スペシャルウィーク産駒。これがそろったときは要注意ですね。


父スペシャルウィークの最高傑作ブエナビスタが Nijinsky クロスから誕生しているように、スペシャルウィークの血統において母の父マルゼンスキーは大きな役割を果たしています。マルゼンスキー、ヤマニンスキー、ラシアンルーブルと、「Nijinsky×Buckpasser」の組み合わせから名種牡馬が連続して生まれたのは、Flaming Page≒Buckpasser 2×2が生じるからでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0003bd/



クィーンズバーンの母シンコウエンジェルは、Tom Fool を持つほか、Buckpasser の母 Busanda と同血の Blue Eyed Momo を持っているので、マルゼンスキーが持つ Flaming Page≒Buckpasser 2×2を刺激した配合です。今回のレースでは無印にしてしまいましたが、配合的には優れた馬ですね。荒れ馬場、単騎逃げ、という条件がそろえばまた激走するでしょう。





桜花賞はジェンティルドンナ


 中団でうまく折り合い、直線で力強く伸びた○ジェンティルドンナ(2番人気)が72代目の桜の女王となりました。2着に▲ヴィルシーナ(4番人気)が入り、ディープインパクト産駒のワンツーフィニッシュです。
http://www.youtube.com/watch?v=GZ4192Cc77E#t=4m52s


ディープインパクトの父サンデーサイレンスは、5つのクラシックレースのうち牡馬三冠とオークスは1、2世代目に早々と制覇したものの、残った桜花賞はなかなか勝てず、初めて勝利を得たのは6世代目のチアズグレイスでした。他のクラシックレースに比べ桜花賞の成績はもうひとつでしたね(といっても3勝していますが)。


これには理由があります。父の全盛期は改修工事前の阪神競馬場が舞台。小回りコースで直線が短く、枠順の内外で有利不利があり、さらには“魔の桜花賞ペース”という言葉もありました。要するにまぎれが多く実力馬が勝ちづらいレースだったため、サンデー産駒でさえすんなり勝てなかったのです。


いまは違います。直線が長くなったことで実力が素直に反映されるようになり、能力のある種牡馬にとって有利なコースとなりました。改修工事後の桜花賞(07年〜)を見ると、08年以外は堅く収まっています。今年も堅く収まりました。1着ジェンティルドンナ、2着ヴィルシーナ、3着△アイムユアーズ(3番人気)という結果は、現在の実力をほぼ正確に表したものだと思います。


ジェンティルドンナはドナウブルー(京都牝馬S)の全妹。姉は430kg前後のコンパクトな馬体をいっぱいに使った弾力性のあるフットワーク。一方、妹は460kg前後とディープ牝馬にしては身体に恵まれています。頭が高いので重心もやや高く、一見、姉ほどのダイナミズムは感じられないのですが、追い出されてからのトモの蹴っぱりが見事です。非常にパワフルですね。雨続きで荒れてしまった今年の芝に合ったタイプといえるかもしれません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106253/



母ドナブリーニは、チェヴァリーパークS(英G1・芝6f)とチェリーヒントンS(英G2・芝6f)の勝ち馬。どちらも2歳重賞です。母の父 Bertolini は「Danzig×Alydar」という力強いアメリカ血統で、名種牡馬 Green Desert の4分の3同血。現役時代はスプリント路線で活躍しました。


ディープインパクトはスプリント血統との相性が良好です。スプリンターは往々にしてガッチリとした力強い体型で筋力があり、回転の速いフットワークを伝えます。小柄でしなやかでトビが大きいディープインパクトに足りない要素です。ディープは相手牝馬に備わったスプリンター的なスピードをフットワークの鋭さに転化し、自身の芝向きの優雅さを損なうことなく産駒に伝え、リアルインパクトやオコレマルーナのような優れたマイラーに仕立て上げます。これは見事です。


G1を勝ったディープインパクト産駒は4頭目ですが、勝ったレースはすべてマイル戦。だからといってマイラー種牡馬かといえばそれは違うと思います。リアルインパクトとジェンティルドンナのように、スプリンタータイプの繁殖牝馬と掛け合わせてマイラーが出るには、種牡馬に中距離をこなす程度のスタミナが必要です。これから中距離、長距離のG1を勝つ馬もどんどん現れるでしょう。


阪神芝1600mと東京芝2400mは、さほど大きな垣根があるわけではないので、ジェンティルドンナがオークスに出走すれば、ベストの距離ではないにしろ上位争いには加わってくるでしょう。ただ、魅力的なのは今回2着のヴィルシーナのほうです。昨年暮れのエリカ賞のあと、友道康夫調教師は「長い距離のほうが合っている」と語りました。エンジンの掛かりが遅いタイプなので長い直線が合いますし、スタミナがあるので距離延長は歓迎です。


◎ジョワドヴィーヴル(1番人気)は6着。大外に回して差し切るという競馬しかないことは、陣営も馬券を買う側も分かっていました。それを可能にするのは抜きん出た実力なのですが、現状ではそこまでの力はなかったということでしょう。最終追い切りの動きは良く見えたのですが、身体が減ってデビュー以来最少体重を記録したように、もうひとつ馬体の成長が見られません。遅生まれにもかかわらず昨年暮れの阪神ジュベナイルフィリーズで激走したダメージが尾を引いているのかもしれません。





ニュージーランドトロフィーはカレンブラックヒル


 4コーナーでうまく馬群をさばいて先頭に並びかけて行った時点で勝負あり。◎カレンブラックヒル(1番人気)が2馬身半差で完勝しました。
http://www.youtube.com/watch?v=dCmpVcTHDgs


『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』『netkeiba.com』に提供した予想は◎○△で馬単2150円、3連単9080円的中です。予想文を転載します。


「◎カレンブラックヒルは『ダイワメジャー×グラインドストーン』という組み合わせ。父ダイワメジャーはダンシングブレーヴとニックスの関係にあるが、ダンシングブレーヴの母の父はドローンで、これがダイワメジャーの2代父ヘイローと相似な血の関係である点が好相性のカギだと思われる。本馬の母の父グラインドストーンはドローンを抱えているので、ダイワメジャーとダンシングブレーヴのニックスと内容的にはほぼ同じ構成を持っている。いかにも小回りコースに強そうな配合なので、中山替わりは吉と出るだろう。先に行く馬なので4番枠も絶好だ。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106230/



前走のこぶし賞は序盤から行きたがり、ずっと力んだような走りでロスがありました。今回はうまくインのポケットに入れての追走。前走よりもリラックスして走ることができ、それがラストの伸びにもつながったように思います。競馬が上手くなっていますね。ダイワメジャー産駒3頭目の重賞勝ち馬となりました。


予想文にも記したとおり、父ダイワメジャーはダンシングブレーヴとニックスの関係にあり、この組み合わせからトーセンベニザクラ(フェアリーS)、ダローネガ(デイリー杯2歳S−2着)、オメガホームラン(ジュニアC)、ダイワミストレス(フェアリーS−3着)といった活躍馬が出ています。


ダンシングブレーヴの母の父は Drone。カレンブラックヒルも Drone を抱えているので同じ構造です。父ダイワメジャーは Halo≒La Menina 2×4で、いずれも Sun Princess と Mahmoud の強い結びつきで成り立っている血なので、これを継続する配合が効果的なのだと思います。Drone はその役割を果たす血で、たとえば桜花賞に出走するトーセンベニザクラなどは母が Drone 4×4です。


Drone でなければダメというわけではなく、Sir Ivor もいいでしょうし、Nasrullah、Royal Charger、Mahmoud あたりが強い繁殖牝馬も合うでしょう。エピセアロームもそうした配合から誕生しました。カレンブラックヒルは Drone を持つだけでなく、母に Sir Gaylord≒Secretariat 4×4があるのがいいですね。Drone は Sir Gaylord の息子です。


今回の圧勝劇が示すとおり、配合的には中山のマイルは合う条件だと思います。次走のNHKマイルCでは、スローペースの追い比べになっては持ち味が活きないので、ちょうどジョーカプチーノが勝ったときのように、強気の競馬、早めの競馬で後続をねじ伏せるようなレースを期待したいですね。





競馬道OnLine G1スペシャル予想


 3月に発売された『パーフェクト種牡馬辞典2012−2013』(自由国民社)の制作では、編集を担当された競馬道OnLine編集部様に大変お世話になりました。


競馬道OnLineのサイトにて、先々週の高松宮記念から栗山求と望田潤がG1レースを交代で予想しております。今週の桜花賞の担当は栗山求。有力馬の血統分析と直前予想を行います。有力馬分析は無料公開、直前の予想は有料会員のみ閲覧できます。よろしければご覧くださいませ。
http://www.keibado.ne.jp/sp2012/


来週の皐月賞の担当は望田潤さん、3週後の天皇賞・春は栗山求……といった具合に交互にやっていきます。







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