パーフェクト種牡馬辞典


古馬の中長距離路線で本領を発揮しそうなジャングルクルーズ


 ■土曜阪神3Rの未勝利戦(芝1600m)は、単勝1.6倍の1番人気に推されたジェンティルドンナが好位から抜け出し、3馬身半差で楽勝しました。
http://www.youtube.com/watch?v=0zkumeSEsFE

全姉ドナウブルー(フィリーズレビュー−4着)は430キロ前後のコンパクトな馬体ですが、本馬は470キロと大柄。姉妹ともにパワフルなフットワークなのは母の父 Bertolini の影響でしょう。「Danzig×Alydar」という力強い血統で、名種牡馬 Green Desert とは4分の3同血の関係です。ピッチ走法を伝えるスピード血統は父ディープインパクトと合います。姉よりも頭が高く、道中はフワフワ走っている感じですが、追い出してからはなかなかの迫力ですね。決め手があります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106253/


母ドナブリーニは、チェヴァリーパークS(英G1・芝6f)とチェリーヒントンS(英G2・芝6f)の勝ち馬。どちらも2歳重賞です。姉ドナウブルーは際立ったレースぷりで新馬−白菊賞を連勝したものの、その後の重賞戦線では4〜6着と馬券に絡めませんでした。早熟タイプなのかなと思ったのですが、先日の1000万下(芝1800m)では不良馬場で感心するぐらい強い勝ち方をしました。重賞クラスに返り咲いてもいいところがありそうです。

妹のジェンティルドンナは、ハイレベルな師走阪神の芝の混合未勝利戦を牝馬ながら3馬身半差で圧勝するわけですから、次走はどこに出ても重い印が付くでしょう。2代母の父リファーズスペシャルは、ハーツクライの2代母ビューパーダンスの全兄です。ハーツクライはビューパーダンスに含まれる Revoked が重要な要素で、Nothirdchance≒Revoked 4×5が配合上のキーポイントです。


このあたりについては旧ブログの09年12月5日のエントリー「ミカエルビスティーと『Nothirdchance≒Revoked』」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2009/12/nothirdchancere.html

ドナウブルーとジェンティルドンナの姉妹もこれを5×6で持っています。ハーツクライよりも代がひとつ遠ざかるので、そのぶん影響力も小さくなりますが、配合の隠し味ぐらいの効果はあるでしょう。

父ディープインパクトは先週の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)をジョワドヴィーヴルで勝ち、2歳種牡馬ランキングでダイワメジャーを逆転してついにトップに立ちました。勝利数(JRA)でも1勝差でトップを保っています。残りあと2週。この戦いは熱いですね〜。

■土曜中山3Rの未勝利戦(芝2000m)は、向正面でマクり気味に好位に取りついたジャングルクルーズ(1番人気)が危なげなく抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=FFbdN670L8Q

11月の東京新馬戦(芝2000m)では、サトノプライマシーとのマッチレースにクビ差敗れましたが、3着以下を6馬身引き離しており、1、2着馬が素質的に抜けているのは誰の目にも明らかでした。今回は順当勝ちでしょう。

「ジャングルポケット×サンデーサイレンス」は、ジャガーメイル、トールポピー、アヴェンチュラ、アプリコットフィズなど多数の重賞勝ち馬を生み出しています。母フィヨルドクルーズは現役時代に愛知杯(G3)3着、福島牝馬S(G3)3着などの成績を残しました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105926/


「ジャンポケ×サンデー」は、2代母の父にスピードタイプや軟弱な血が入ると総じてイマイチですね。いかつい Northern Dancer 系、ヨーロッパ型の重厚な血、スタミナに秀でた血がフィットします。この馬の2代母の父 Mtoto は名ステイヤー Busted の子で、現役時代にキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)、エクリプスS(英G1・芝10f)〔2回〕などを制しました。まさに条件にぴったりの血です。スタミナと底力に恵まれた配合なので、ジャガーメイルのように古馬になってから中長距離路線で本領を発揮しそうです。





香港スプリントでカレンチャン5着


 日曜日は競馬場にいたので、香港国際競走の結果は帰宅してから知りました。注目の香港スプリント(G1・芝1200m)はカレンチャンが大健闘の5着。思わず笑ってしまいました。もちろん馬鹿にしたわけではありません。カレンチャン凄すぎ!という感嘆の笑いです。
http://www.youtube.com/watch?v=G8A3NipAm8M

4コーナーでごちゃごちゃしてスムーズさを欠き、それでも最後にまた伸びてきているので、ちょっと惜しいレースでしたね。輸送トラブルがあったことを考えれば勝ち負けに等しい善戦だったと思います。

香港スプリントは世界最高峰のスプリント戦のひとつで、日本馬がまったく歯が立たないことでも知られているレースです。過去の最高着順は芝直線1000mで行われていた時代の7着(04年サニングデール)。芝1200mになってからは8着(08年ローレルゲレイロ)が最高です。たいていの年は二桁着順で、上位争いから遠く離れた惨敗なのですから、日本馬の凱旋門賞挑戦よりもハードルが高いともいえます。そのレースでカレンチャンは5着。しっかり勝負になっています。筋骨隆々とした香港のセン馬たちに交じって可憐な大和撫子が健気に頑張っている姿はキュンと来ますね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102807/



カレンチャンはクロフネ産駒で、スプリングチケット(京阪杯)の半妹にあたります。母スプリングチケットは「トニービン×マルゼンスキー」という組み合わせ。同じクロフネ産駒のシェルズレイ(ローズS−2着)とブラックシェル(NHKマイルC−2着、日本ダービー−3着)の姉弟は、母の父ウイニングチケットが「トニービン×マルゼンスキー」なので配合構成がよく似ています。


同厩のロードカナロアも相当な器であるとはいえ、今回の結果を見ると、やはりカレンチャンは日本のスプリンターのなかでは飛び抜けた実力の持ち主でしょう。





『競馬王』1月号発売


 自宅に見本誌が届きました。早くも2012年の新年号です。内容的には有馬記念を掘り下げた企画がいくつかあるなど、年内の競馬もフォローしています。自分の持ち場でわたしも書かせてもらっています。ぜひ1冊お手元にどうぞ。




阪神ジュベナイルフィリーズはジョワドヴィーヴル


 この秋、ドリームジャーニーの全弟オルフェーヴルが三冠を達成し、カンパニーと血統構成が酷似したトーセンジョーダンが天皇賞・秋を勝ちました。兄弟や近親、似た配合が走るのは日常茶飯事です。しかし、この日の▲ジョワドヴィーヴル(4番人気)の勝利はインパクトが違いました。血統って凄いな、とあらためて感じました。
http://www.youtube.com/watch?v=teBIQpbhaQI

半姉ブエナビスタと同じく馬体はさほど見栄えがしません。たしかに品はあるのですが、筋肉量は少なく、まだ幼さを残しています。418キロの馬体重は出走18頭のなかでガーネットチャームと並んで最軽量。5月13日の誕生日は最も遅いものです。さらにキャリアわずか1戦。それであのパフォーマンスですから素質はズバ抜けています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106278/


競走馬は大きいほうが有利です。「TARGET frontier JV」で馬体重別の競走成績を調べてみると、たとえば400〜419キロの馬は連対率7.7%ですが、500〜519キロの馬は17.0%です。1走あたりの賞金額を比べてみると、前者の57万円に対し、後者は190万円です(00年以降)。

小柄ながら大柄な馬に伍して一流の成績を収めている馬には、不利を補う何らかの武器があります。良質な筋肉であったり、敏捷さであったり、心臓の強さであったり、精神力であったり、それはさまざまです。

Hyperion や Northern Dancer や Mill Reef など、小柄ながら歴史的成功を収めた種牡馬は、小ささを補うプラスアルファを子に伝え、そうした卓越した“何か”がサラブレッドの進化に影響を及ぼしてきたという面は確かにあると思います。

ジョワドヴィーヴルは、その小さな馬格で、なおかつ筋肉が付ききっていない状態で今回の芸当をやってのけたのですから、尋常でない資質を秘めています。具体的にいえば心臓の強さと筋肉の質、そして走法でしょう。

心臓についてはデビュー前の心肺機能テストの数値がケタ違いだったと聞きます。筋肉についてはあの薄い馬体であれだけのバネを生み出しているのですから良質であることは疑いようがありません。走法については首を支点として全身が躍動するフットワークが印象的です。これは父ディープインパクトによく似ています。


レース後、表彰式に向かう福永祐一騎手が、吉田勝己ノーザンファーム代表の傍らにやってきて、「いやぁ強いですよ、凄いです!」と話しかけました。吉田さんはニコニコと笑って聞いていました。

松田博資調教師もえびす顔です。「2戦目にこれだけ変わるとは思わなかった。このまま無事に行ってくれたらいいですね。とくにいじるところもないし」。このレースを勝った過去の管理馬2頭(ブエナビスタ、レーヴディソール)との比較を問われると「同時期に出てこないと分からんよね」とかわしていました。


配合については11月15日のエントリー「スパッと切れたジョワドヴィーヴル」に記しています。一部を転載します。
http://kuriyama.miesque.com/?day=20111115

「ビワハイジが伝える瞬発力は、主に Sir Gaylord に由来していると思われます。Sir Gaylord は抜群の切れ味を誇った Sir Ivor の父であり、瞬発力のお化けだったダンシングブレーヴの血統においても大きな役割を果たしています。レーヴディソールはその母レーヴドスカーが Sir Gaylord 4×4です。ビワハイジは Sir Gaylord の主要な構成要素である Turn-to と Princequillo を継続し、Foreseer≒Sir Gaylord 2×3としています。これが瞬発力の安定供給を可能としている鍵ではないか、と思われます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109481/


ビワハイジの最高傑作ブエナビスタは、Nijinsky 4×3によって底力を獲得しました。瞬発力は往々にして柔らかさを母体とし、そこには非力さも見え隠れしますから、大レース向きの底力や大物感といったものを生み出すには、剛健な血を合わせることが近道です。ブエナビスタはそれに成功しました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103319/


ジョワドヴィーヴルはこれとはタイプが異なります。父ディープインパクトはビワハイジとよく似た構成の Alzao を抱えており、Sir Gaylord をはじめとする主要な構成要素をそっくり継続しています。Alzao≒ビワハイジ3×1といってもいいでしょう。この配合は過激です。剛健さは感じられないものの母の圧倒的なポテンシャルでカバーしています。」


Sir Gaylord がなぜ瞬発力を伝えるかについては、旧ブログの昨年5月12日のエントリー「Sir Gaylord の瞬発力」ごご参照ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/05/sir-gaylord-ce0.html

ジョワドヴィーヴルの配合評価は、血統屋の電子書籍『種牡馬別好配合馬リスト ディープインパクト編』では◎、『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」でも推奨しており、ディープインパクト産駒としては最高レベルに評価していました。ただ、今回のレースについては不安材料もそれなりにあったので▲にとどめました。想像以上の強さでした。

◎アナスタシアブルー(7番人気)は12着。序盤にいい位置を取りに行ったのですがスローペースで馬が力んでいましたね。馬の力も足りませんでした。





シンコウラブリイ死す


 個人的には“クールな才女”といったイメージがありました。同じ岡部騎手が騎乗したシンボリルドルフの女版といった感じですね。


関東でのレースはしょっちゅう見ていましたが、引退レースとなったマイルチャンピオンシップ(G1)は京都競馬場まで出かけました。第7Rの京都3歳Sをナリタブライアンが3馬身差で圧勝し、これはケタ違いに強いなぁ〜と感心していたら、上空を暗く覆っていた雲から雨が落ちてきました。雨脚は増すばかりで、メインレースは不良馬場。こんな馬場で大丈夫だろうか、という不安をよそに3番手から抜け出して完勝しました。管理する藤沢和雄調教師にとって記念すべき初のG1タイトルです。
http://www.youtube.com/watch?v=DeWBjzi2_Ew


通算成績15戦10勝。馬券対象から外れたのがわずか1回という安定性は強い精神力のたまものでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1989108586/



90年代の日本競馬に Caerleon が果たした役割は大きかったと思います。活躍拠点のイギリスでは、ジェネラス(英ダービー、愛ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)を筆頭に多くのG1馬を送り出し、88年と91年には英愛リーディングサイアーに輝きました。アメリカで走った Kostroma が芝9ハロンで1分43秒92という世界レコードを樹立したように、堅い馬場が得意で瞬発力もあったので、わが国の競馬にフィットしました。


日本で走った産駒は、シンコウラブリイのほかにフサイチコンコルド(日本ダービー)、ビワハイジ(阪神3歳牝馬S)、エルウェーウィン(朝日杯3歳S)、ゼンノエルシド(マイルチャンピオンシップ)などがいます。


藤沢和雄厩舎は Caerleon がよく似合いました。前出のシンコウラブリイ、ゼンノエルシドのほかに、母の父に Caerleon を持つタイキシャトルも所属していました。ちなみに、タイキシャトルの母ウェルシュマフィンとシンコウラブリイは配合構成がよく似ています。



Caerleon 産駒は素軽く気のいいタイプが多いので、調教でいっぱいに攻めなくても走ります。馬なり調教で知られる藤沢和雄厩舎で良績を残したのも、そうした個性と無縁ではないでしょう。久々をものともせず日本ダービーを勝ったフサイチコンコルドは、その中間に何度か熱発し、十分なけいこを積んだとはいえない状態で差し切りました。


シンコウラブリイは繁殖牝馬としても成功し、ロードクロノス(中京記念)、トレジャー(目黒記念−2着)、レディミューズ(チューリップ賞−2着)、ピサノグラフ(フローラS−4着)などを出しています。孫の代からはシンメイフジ(新潟2歳S、関東オークス)が出ており、しっかりと血を繋いでいます。活躍馬は今後まだまだ出てくるでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103593/



12月5日、蹄葉炎のため22歳で逝きました。11年生まれのディープスカイの牝が最後の産駒です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011100429/








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