パーフェクト種牡馬辞典


雨の重賞は Sadler's Wells


 フラワーC(G3・芝1800m)とファルコンS(G3・芝1400m)はいずれも重馬場。勝ったオメガハートランドとブライトラインはいずれも母方に Sadler's Wells を持っていました。


90年代以降、ヨーロッパ競馬の中心的存在である Sadler's Wells は、深い洋芝を得意とし、道悪も上手です。産駒が日本でほとんど活躍できなかったように、高速馬場向きの素軽さや決め手には欠けます。


ただ、世界を牛耳る中心血脈のひとつですから、並のポテンシャルではありません。用法や用量を守れば我が国でも素晴らしい成果を得ることができます。子は失敗したものの、孫の代ではテイエムオペラオー、メイショウサムソン、エルコンドルパサー、フサイチコンコルド、シーザリオなどそうそうたる名馬が誕生しています。劇薬のようなものですから濃すぎると副作用が生じて逆効果。1/4とか1/8といった形に希釈し、調合がうまくいけば抜群の薬効を発揮します。かつての Ribot なども似たようなキャラクターでした。


先に述べたように、Sadler's Wells は道悪巧者として有名で、雨が降ればオペラハウス(父 Sadler's Wells)の子が出走していないかどうかチェックするのが個人的な習慣です。


フラワーCを勝ったオメガハートランドは、キャプテントゥーレと同じくトニービンと Lyphard を併せ持つアグネスタキオン産駒ですから、基本的な配合形はいいですね(タキオン産駒は Lyphard と相性が良好)。母の父にエルコンドルパサーを挟んでいるので重厚さが表れており、渋った馬場を苦にせず、桜花賞よりはオークス向きです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105758/



一方のブライトラインは、快速サーガノヴェル(フェアリーS、クリスタルC)の甥で、母の父にキングオブキングスが入ります。キングオブキングスは英2000ギニー(G1・芝8f)の勝ち馬で、愛2000ギニー(G1・芝8f)やBCマイル(米G1・芝8f)を勝った Barathea と同じ「Sadler's Wells×Habitat」の組み合わせです。1年だけ日本で供用されました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105023/



フジキセキ産駒は Mr.Prospector や Princely Gift といった優秀なスピードをどこかに入れないと厳しいのですが、ブライトラインの場合、快速サーガノヴェルを産んだ2代母 Thunder Maid が On-and-On≒Leallah 3×3でスピード値が高く、このあたりで帳尻を合わせています。これにキングオブキングスが加わったことで道悪の鬼になった、というイメージです。





遅れてきた大物ファイナルフォーム


 土曜中山5Rの未勝利戦(芝1800m)は、好位追走のファイナルフォーム(1番人気)が終始外を回りながら楽々と抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=vYHrB0NpS4Q


先週金曜日(3月16日)に発行した血統屋メールマガジンの「今週の狙い馬」で◎を打った馬です。転載します。
http://www.mag2.com/m/0001305873.html
………………………………………………………………………………………
■土曜中山5R・未勝利戦
◎ファイナルフォーム
仕上がりが大幅に遅れ、デビューが新馬戦最終週までずれ込んでしまった。未勝利戦で下ろすのはそれでも勝てるという強気の表れだろう。母ファイナルデスティネーションはNZ1000ギニー(G1)など同国でG1を2勝した名牝。母方にラストタイクーンが入るパターンはマルセリーナやターゲットマシンと同じ。ポテンシャルの高さを感じさせるマイラー血統で、距離は微妙に長いが能力の高さで押し切れるだろう。
………………………………………………………………………………………
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105921/



「536キロ」という馬体重は、ディープインパクト産駒のデビュー戦としては過去最高です。パドックではかなり太いという印象だったので、ひょっとしたらあと20キロぐらいは絞れるかもしれません。道中、微妙に行きたがってはいましたが、終始外を回って楽勝しており、距離が長いという感じはありませんでした。


血統屋の『種牡馬別好配合馬リスト ディープインパクト編』で◎評価とし、『POGの達人(赤本)』の「私のオススメ10頭」、『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」でも取り上げるなど、方々でプッシュした覚えがあります。


ファルコンS(G3)4着のダノンムロー(父 Gone West)、ダートでOPクラスまで出世したファイナルスコアー(父 Fusaichi Pegasus)の半弟ですが、それらよりも配合的には上だと思うので、重賞で勝ち負けを期待したい素質馬です。


母の父 O'Reilly はニュージーランドの年度代表馬で、チャンピオンスプリンター&マイラーにも選ばれたスピード馬。父がラストタイクーンで、母の父が Round Table 系ですから、マルセリーナの母の父 Marju と似ています。Round Table といえば Caerleon の母の父でもあります。ディープインパクトと Caerleon のニックスの核心部分と思われる血なので好ましいですね。
http://www.pedigreequery.com/oreilly



今回の道悪競馬の結果では、良馬場での切れ味やスピード性能までは分かりません。おそらく問題ないだろうと思います。ここまでデビューが遅れたので大きなことは言えませんが、一歩ずつ着実に階段を昇ってほしいところです。





しばらくの間アッサリとした更新になります


高松宮記念が迫ると春競馬の気分がグッと盛り上がってきます。ブログも調子よく書いていきたいところですが、この時季、春の出版物に関わる仕事量もピークを迎えます。今年は新馬戦の開始が2週間早まる影響で、POG関連の原稿スケジュールがタイトになっており、例年以上に厳しい状況です。ブログを書く時間がどうしても取れません……。不本意ながらこれからしばらくの間、アッサリとした感じで更新を続けたいと考えております。ゴメンナサイ!




『サラブレ』4月号発売


 3月13日に『サラブレ』4月号(株式会社エンターブレイン)が発売になりました。高松宮記念、桜花賞、皐月賞、そしてドバイワールドCデーの展望などが盛りだくさんの内容ですが、そのなかで「現役馬の血統七不思議」という記事を執筆いたしました。カラー4ページの特集企画です。「なぜこんなに走る!? 父ステイ×母父マックの謎」など、7つの血統ミステリーについて栗山求の考えを記しました。ぜひ一冊お手元にどうぞ。




スプリングSはグランデッツァ


 離れた第二集団でレースを進めた▲グランデッツァ(3番人気)が、直線で先に抜け出した◎ディープブリランテ(1番人気)を残り50mで捉えました。
http://www.youtube.com/watch?v=izPi1NBJBkg


相手はディープブリランテ1頭、と見定めてレースを進めたミルコ・デムーロ騎手が上手かったですね。外も伸びる馬場になっていたので、レーススタイルを崩さず自然な形で勝てたのもよかったと思います。一貫してレースレベルの高いところを使ってきて、馬場も展開も関係なく崩れていないわけですから能力は確かです。昨年暮れのラジオNIKKEI杯2歳S(3着)は筋肉痛で調整に狂いが生じ、本調子ではありませんでした。共同通信杯を勝ったゴールドシップとは2戦して1勝1敗。きさらぎ賞と若葉Sを連勝したワールドエースとはまだ対戦していません。この2頭に比べてグランデッツァは出遅れ癖がなく(デビュー戦は出遅れましたが)、いい位置でレースを進められるという強みがあります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105989/



桜花賞馬マルセリーナの半弟で、母マルバイユはアスタルテ賞(仏G1)など3つのマイル重賞を制した名牝。『競馬王のPOG本』では「競合覚悟で上位指名すべき5頭」と「栗山ノート」にリストアップし、血統屋の電子書籍『種牡馬別好配合馬リスト アグネスタキオン編』では◎評価で牡馬のトップに据えました。この本では望田潤さんが◎、桑原拓三さんが○評価ですから、どの角度から切っても悪くは見えないという好配合馬です。


母マルバイユが伝えるスピードは、Hyperion がベースとなっているので、大レース向きの底力があります。2代母 Hambye には Ribot のクロスもあります。こういう血はアグネスタキオンと合います。半姉マルセリーナ(父ディープインパクト)は Burghclere≒Welsh Flame 3×4で、弟グランデッツァは Alcide≒Electric Flash 5×5。Welsh Flame は Electric Flash の娘なので、2頭とも似たようなポイントを強化しています。



アグネスタキオン産駒における Alcide 周辺の強化は、鈍重さを帯びるリスクを抱えるので、全体の血脈の質を十分吟味する必要があります。構わず走ったということはマルバイユのスピードの質が優れていることの証明でしょう。


新馬戦で2着に敗れたあと、ブログに「本領を発揮するのは中央開催の芝1800〜2000mだと思います」と記しました。ダービーよりも皐月賞に向くタイプです。同じアグネスタキオン産駒で4年前に優勝したキャプテントゥーレとは、タイプは違うものの能力的に劣るとは思えません。流れが向けば勝つ可能性も十分あるでしょう。


アグネスタキオン産駒の3歳牡馬はグランデッツァが孤軍奮闘している状態で、ほかにめぼしい馬は見当たりません。ラストクロップとなる現2歳世代は、3歳世代よりはメンバーがそろっている印象があるので、活躍が期待できると思います。


1番人気のディープブリランテは、体が絞れたのはよかったのですが、行きたがったりモタれたりと、相変わらず操縦の難しい馬です。スタートから一生懸命走ってしまうタイプなのでタメが利かず、それがゴール前の甘さにつながっています。精神的な問題なので短期で矯正できるかというとなかなか大変かな……という気はします。


△アルフレード(2番人気)は12着。久々や道悪という悪条件を考慮しても負けすぎですね。86年以降、前走が10着以下の成績で皐月賞で連対を果たしたケースは一度もありません。







プロフィール

カレンダー

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2019 >>

最近の記事

カテゴリー

アーカイブ

recent comment

  • 『競馬場の達人』に出演します
    梅こんぶ
  • 『競馬場の達人』に出演します
    Y子
  • 「一口馬主好配合馬ピックアップ」でニューワールドRを追加ピック
    栗山求
  • 「一口馬主好配合馬ピックアップ」でニューワールドRを追加ピック
    バリュー
  • 「一口馬主好配合馬ピックアップ」でユニオンをピック
    栗山求
  • 「一口馬主好配合馬ピックアップ」でユニオンをピック
    18
  • netkeiba.com にコラムを執筆しました
    ヒデハヤテ
  • 『POGの達人 2018〜2019年』本日発売!
    Y子
  • 『パーフェクト種牡馬辞典 2018−2019』本日発売開始!
    栗山求
  • 『パーフェクト種牡馬辞典 2018−2019』本日発売開始!
    jiumi

recent trackback

LINK

検索

携帯

qrcode