パーフェクト種牡馬辞典


2011年の米リーディングサイアーは Distorted Humor


 Frankel というスーパースターが出現して盛り上がったヨーロッパ競馬に比べ、昨年のアメリカ競馬はもうひとつ盛り上がりを欠いた印象があります。秋に行われたブリーダーズCも「フォローしなくては……」と思いつつ、気が付けばタイミングを逸して触れずじまいでした。サイアーランキングはさすがに無視するわけにはいかないので今回やっておきます。

集計は『BloodHorse.com』なども採用している Equineline 社のものです(対象は北米繋養の種牡馬で、集計範囲は北米に加えてヨーロッパ主要国、UAEを含む)。

1位 Distorted Humor(1993年生・byフォーティナイナー)$10,371,534
           http://www.pedigreequery.com/distorted+humor
2位 Smart Strike(1992年生・by Mr.Prospector)    $9,446,526
           http://www.pedigreequery.com/smart+strike
3位 Tapit(2001年生・by Pulpit)           $9,229,483
           http://www.pedigreequery.com/tapit
4位 Giant's Causeway(1997年生・by Storm Cat)     $8,506,849
           http://www.pedigreequery.com/giants+causeway
5位 Malibu Moon(1997年生・by A.P.Indy)       $7,594,642
           http://www.pedigreequery.com/malibu+moon
6位 More Than Ready(1997年生・by Southern Halo)   $7,473,859
           http://www.pedigreequery.com/more+than+ready
7位 Speightstown(1998年生・by Gone West)      $7,195,605
           http://www.pedigreequery.com/speightstown
8位 エンパイアメーカー(2000年生・by Unbridled)   $7,022,968
           http://www.pedigreequery.com/empire+maker
9位 Medaglia d'Oro(1999年生・by El Prado)      $6,882,615
           http://www.pedigreequery.com/medaglia+doro
10位 Kitten's Joy(2001年生・by El Prado)       $6,801,569
           http://www.pedigreequery.com/kittens+joy

リーディングサイアーの座についたのは Distorted Humor。ブリーダーズCクラシック(G1・ダ10f)を8番人気で制した Drosselmeyer の父です。05年以降、2、6、3、4、2、2位と上位の常連で、昨年ついに首位に立ちました。


基本的にはダートのスピードタイプですが、配合によっては中長距離もこなし、芝で活躍する子も少なくありません。絵に描いたような万能型ですね。日本には息子のフォーティナイナーズサンが導入されており、すでに産駒が走り始めています(現3歳が初年度産駒)。

3位 Tapit は躍進が著しい若手種牡馬。28位→12位→3位と猛烈な勢いで上昇しています。日本ではフェブラリーSに出走するテスタマッタの父として知られています。A.P.Indy 系には次代を担うと期待されている Bernardini という種牡馬がおり、この2頭はいずれも母の父が Fappiano 系である、という共通点があります。


「A.P.Indy×Mr.Prospector」は、Tapit の父 Pulpit をはじめ、Mineshaft、Malibu Moon、Congrats、Tempera、Tomisue's Delight、Accelerator、Little Belle などが出ておりニックスといえます。A.P.Indy と Fappiano の組み合わせはそこから派生した関係で、昨日のエントリーでも触れたとおり、ここ最近よく目にします。1月29日のホーリーブルS(米G3)を5馬身差で勝って通算成績を3戦3勝とし、クラシックの有力候補に名乗りをあげた Algorithms は、Bernardini 産駒で Fappiano を継続しています。この配合は日本の芝で素軽い伸びを期待できるものではありませんが、海外のトレンドとして注目したいところです。


ちなみに、Tapit の母 Tap Your Heels は、8位エンパイアメーカーと配合構成が酷似しており、その中核は Unbridled に含まれる Dr.Fager と In Reality のニックスの継続にあります。この威力はさすがです。これについては昨年6月2〜4日のエントリー「Dr.Fager と In Reality のニックス(1)〜(3)」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/06/drfager-in-real-08b5.html
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/06/drfager-in-real-2886.html
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/06/drfager-in-real-71c3.html


2年連続トップだった Giant's Causeway は4位転落。少数の大物に依存するのではなく大量の産駒が広く賞金を稼いでくるタイプなので、毎年の成績は安定しています。獲得賞金を見ると、前年とほぼ同水準なので、11年がとくに不振だったわけではありません。Giant's Causeway よりも多く稼いだ種牡馬が3頭いたということです。

トップ10の父系勢力図は、Mr.Prospector 系が4頭、A.P.Indy 系と Sadler's Wells 系が2頭、Storm Cat 系と Halo 系が1頭ずつ。昨年3頭いた Storm Cat 系が1頭に減ったのが目につきます。





土曜日に東京競馬場のイベントに出演します


 2月18日(土)、東京競馬場のセンターコートで行われるオープン型レーシングセミナーに出演します。時間はだいたい11時30分ごろから16時30分ごろまで。司会は竹山まゆみさん、共演は須田鷹雄さん、井内利彰さんです。よろしければお立ち寄りください。




芝も問題なかったマウントシャスタ


 ■日曜東京1Rの未勝利戦(ダ1400m)は、好位追走のオールドパサデナ(1番人気)が抜け出しました。


牝馬限定のダート未勝利戦を勝っただけですから、現状ではとりたてて大物感があるというわけではないのですが、エンパイアメーカー産駒のアメリカにおける成功パターンに当てはまる馬なので取り上げます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105757/



エンパイアメーカーは現役時代にベルモントS(米G1・ダ12f)などG1を3勝した名馬で、周知のとおり現在は日本に輸入されており、昨シーズンから日本軽種馬協会静内種馬場で供用されています。今年の中山金杯を勝ったフェデラリストが日本における代表産駒。同馬の活躍によってサンデー牝馬との相性が悪くなさそうだということが分かりました。


アメリカ時代は、Seattle Slew、Secretariat、Mr.Prospector と優れた相性を示していました。G1級の産駒はほとんどこのパターンに当てはまります。いずれもど真ん中の主流血統なので、こうした配合ができやすいのも事実ですが、エンパイアメーカーの場合、それを考慮に入れてもこの3つの血脈との相性がずば抜けていました。


オールドパサデナの配合には、上記の3つの血脈がすべて含まれています。アメリカ型の成功パターンにストライクで当てはまります。「エンパイアメーカー×A.P.Indy」の組み合わせは、昨年のブリーダーズCレディーズクラシック(米G1・ダ9f)を勝った Royal Delta と同じです。同馬は今年のドバイワールドC(首G1・ダ2000m)に出走予定なので日本馬との対決が見られます。ちなみに、Fappiano と A.P.Indy を近い世代に併せ持つ配合は、アメリカで注目を集める若手種牡馬 Bernardini や Tapit などと同じ。この組み合わせは次代のニックスとして注目したいですね。
http://www.pedigreequery.com/royal+delta3



主流血統と合う、ということは種牡馬にとって大きなセールスポイントです。エンパイアメーカーは、アメリカの主流血脈だけでなく、日本の主流血統であるサンデーサイレンスとも相性が悪くなさそうなので、相手牝馬の良さを活かす力に長けた種牡馬なのでしょう。


■日曜京都5Rの新馬戦(芝1800m)は、好位追走の○マウントシャスタ(1番人気)が危なげなく抜け出し、断然人気にこたえました。
http://www.youtube.com/watch?v=97P3I2AtUhk


レパードS(G3・ダ1800m)を勝ったボレアスの全弟。攻め馬だけでは芝適性は分からない、との警戒感から印は○にとどめたのですが、杞憂に終わりました。フットワークを見ると全兄がダート馬とは思えない伸びやかなフットワーク。上がり3ハロンは35秒1と大したことはありませんが、12秒0−11秒8−11秒5と尻上がりに速くなるラップを楽に抜け出したので、切れ味という点にも不安はないでしょう。


2代母クロカミは府中牝馬S(G3)と京王杯オータムH(G3)を制した活躍馬。Caerleon 産駒ではあるのですが、母の父 Desert Wine の影響なのか、産駒はどれもこれも決め手のないダート馬ばかりでした。母クロウキャニオンもその1頭。兵庫ジュニアグランプリ(G3)で3着となった砂巧者で、息子のボレアスも芝向きのディープインパクトの子ながらパワータイプに出ました。その全弟マウントシャスタの場合、馬場適性に関していえば、受け継いだ遺伝子、あるいはスイッチがONになった遺伝子が兄とは異なるものだったのでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106130/



母方に Caerleon を持つディープインパクト産駒には、トーセンレーヴとジョワドヴィーヴルの兄妹、本馬の全兄ボレアス、ダノンシャーク、パララサルーなどがいます。このパターンの連対率48.6%は凄まじい数字です。





やんちゃだが器が大きいエアソミュール


 ■土曜東京6Rの新馬戦(ダ1600m)は、好位追走の◎ローレルクラウド(6番人気)が直線半ばで抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=wDtzUzFQaGc


予想は◎▲で馬単6470円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想を転載します。


「◎ローレルクラウドは『スペシャルウィーク×シーキングザゴールド』という組み合わせ。母ナミビアにはブサンダ4×4というパワフルな牝馬クロスがあり、自身はそれを継続発展させる形でバックパサー5×4がある。ダート適性は高く、仕上がりの早いタイプだろう。父スペシャルウィークは東京ダ1600mの新馬戦で連対率50%(8戦4勝)という成績を残している。この条件は走る。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102135/



半姉に準OPまで出世したキルシュワッサー(父サクラバクシンオー)がいます。「スペシャルウィーク×Seeking the Gold」といえばダート重賞を2勝したゴルトブリッツと同じ。スペシャルウィークは硬質なアメリカ血統と結びつくと容易にダート向きの適性を表します。


これで東京ダ1600mの新馬戦は連対率55.6%(9戦5勝)となりましたが、そもそも距離やコースを問わず基本的にダート新馬戦を得意としています(連対率30.4%)。新馬戦が一発勝負となった03年6月以降、ダート新馬戦で通算30走以上して連対率が30%を超えている現役種牡馬はスペシャルウィークしかいません。


■土曜京都9Rのつばき賞(3歳500万下・芝1800m)は、中団から大外を回って進出したエアソミュールが直線で抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=_0fZstskbW4


2代母アイドリームドアドリームは名繁殖牝馬として知られています。子の代からエアシャカール(皐月賞、菊花賞)とエアデジャヴー(クイーンS)を、孫の代からエアメサイア(秋華賞)とエアシェイディ(アメリカJCC)を出しました。活力はまだ衰えていません。


エアソミュールはエアシャカールの全妹を母に持ち、「ジャングルポケット×サンデーサイレンス」のニックスから誕生しています。ハイレベルな競走能力を期待できる配合でしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105742/



ただ、レースぶりが見るからにやんちゃで、ジョッキーが毎回苦労して御しています。気性的な難しさはジャングルポケット産駒には珍しくないのですが、そのなかでもこの馬は難物の部類かもしれません。まともに走れば重賞でも通用する能力を秘めています。常識に掛からないタイプだと思われるので、コロッと凡走したかと思うと次走あっさり勝ったり、あるいはその逆だったり、馬券的には妙味のあるタイプでしょう。ハイペースの底力勝負で大物喰いが期待できます。





これからどんどん良くなりそうなラスヴェンチュラス


 ■土曜東京2Rの新馬戦は、出遅れて最後方を追走した◎フェアリーライン(1番人気)が直線で大外を突き抜けました。
http://www.youtube.com/watch?v=BPwHpvJBClI


勝ち時計は遅かったのですが勝ちっぷりは圧巻。538キロの雄大な馬格も大物感十分です。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想を転載します。


「◎フェアリーラインは『ファスリエフ×サザンヘイロー』という組み合わせ。父ファスリエフはダ1000〜1400mの新馬戦で連対率58.3%(12戦7連対)と驚異的な成績を残している。ヌレイエフ≒フェアリーダンサー2×2という配合構成は、先週、当コースで行われた新馬戦を8馬身差で圧勝したフルヒロボーイとよく似ている。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106587/



ダート短距離新馬戦のファスリエフ、というのは当ブログの定番ネタとなりつつあります。ダ1400m以下の新馬戦では連対率61.5%(13戦8連対)となりました。尋常ではない数字です。スタートで失敗した瞬間、思わずガクッとうつむいてしまったのですが、こんな競馬で勝ったのですから能力が抜けていました。予想文にも記したとおり、先々週の新馬戦を勝ったフルヒロボーイと配合構成がよく似ています。
http://kuriyama.miesque.com/?eid=118


たとえば、Kingmambo は Nureyev≒Sadler's Wells のクロスが成功していますが、息子のキングカメハメハはそうでもありません。同じクロスでも父によって成功しやすかったりそうでなかったりします。ファスリエフの場合、Nureyev をいじる配合パターンが成功しやすいタイプなのでしょう。Never Bend を抱えているため、Fairy Bridge(Sadler's Wells の母)が入ると Never Bend≒Bold Reason が生じるからかもしれません。基本的に Nureyev≒Sadler's Wells や、それに類するクロスは重いので、パワーが必要な洋芝やダートのほうがいいですね。軽い馬場で走らせるにはそれ以外の部分に素軽い血を入れるなどのサポートが必要です。


■土曜東京5Rの未勝利戦(芝2000m)は、ラスヴェンチュラス(1番人気)が大外から豪快に差し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=sR_gPgvsark


逃げ馬が2着に残ったように前残りの流れでしたが、ラスヴェンチュラスが目の覚めるような決め手を発揮しました。前走のデビュー戦は中団追走から大外をマクッて2着。牡馬相手の距離ロスが大きい競馬ながら、直線で垂れることなく最後までしっかり伸びたところに素質の高さを感じさせました。まだ成長の余地がある416キロという華奢な馬体なので、暖かくなるにつれてどんどん良くなってきそうな予感がします。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105821/



全兄ディープサウンドは、3歳春に共同通信杯(G3)3着、ニュージーランドT(G2)4着などの成績を残しています。母の父デインヒルの影響を感じさせるガッチリとした馬体で、マイル前後がベスト。しかし、ラスヴェンチュラスは牝馬ということで兄よりも柔軟性と切れ味に優れ、その結果として中距離への対応力もあります。


3代母 Allicance は Blushing Groom の半妹。この牝系は仕上がりそのものは早いのですが、成長力のある血を受けているので、古馬になってじわじわ強くなっていくという特長があります。アグネスデジタルはそうでしたし、全兄ディープサウンドも年明けの1000万条件戦を快勝して再び上昇気流に乗ろうとしています。ラスヴェンチュラスも長い目で見たい馬です。







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