パーフェクト種牡馬辞典


香港スプリントでカレンチャン5着


 日曜日は競馬場にいたので、香港国際競走の結果は帰宅してから知りました。注目の香港スプリント(G1・芝1200m)はカレンチャンが大健闘の5着。思わず笑ってしまいました。もちろん馬鹿にしたわけではありません。カレンチャン凄すぎ!という感嘆の笑いです。
http://www.youtube.com/watch?v=G8A3NipAm8M

4コーナーでごちゃごちゃしてスムーズさを欠き、それでも最後にまた伸びてきているので、ちょっと惜しいレースでしたね。輸送トラブルがあったことを考えれば勝ち負けに等しい善戦だったと思います。

香港スプリントは世界最高峰のスプリント戦のひとつで、日本馬がまったく歯が立たないことでも知られているレースです。過去の最高着順は芝直線1000mで行われていた時代の7着(04年サニングデール)。芝1200mになってからは8着(08年ローレルゲレイロ)が最高です。たいていの年は二桁着順で、上位争いから遠く離れた惨敗なのですから、日本馬の凱旋門賞挑戦よりもハードルが高いともいえます。そのレースでカレンチャンは5着。しっかり勝負になっています。筋骨隆々とした香港のセン馬たちに交じって可憐な大和撫子が健気に頑張っている姿はキュンと来ますね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102807/



カレンチャンはクロフネ産駒で、スプリングチケット(京阪杯)の半妹にあたります。母スプリングチケットは「トニービン×マルゼンスキー」という組み合わせ。同じクロフネ産駒のシェルズレイ(ローズS−2着)とブラックシェル(NHKマイルC−2着、日本ダービー−3着)の姉弟は、母の父ウイニングチケットが「トニービン×マルゼンスキー」なので配合構成がよく似ています。


同厩のロードカナロアも相当な器であるとはいえ、今回の結果を見ると、やはりカレンチャンは日本のスプリンターのなかでは飛び抜けた実力の持ち主でしょう。





『競馬王』1月号発売


 自宅に見本誌が届きました。早くも2012年の新年号です。内容的には有馬記念を掘り下げた企画がいくつかあるなど、年内の競馬もフォローしています。自分の持ち場でわたしも書かせてもらっています。ぜひ1冊お手元にどうぞ。




阪神ジュベナイルフィリーズはジョワドヴィーヴル


 この秋、ドリームジャーニーの全弟オルフェーヴルが三冠を達成し、カンパニーと血統構成が酷似したトーセンジョーダンが天皇賞・秋を勝ちました。兄弟や近親、似た配合が走るのは日常茶飯事です。しかし、この日の▲ジョワドヴィーヴル(4番人気)の勝利はインパクトが違いました。血統って凄いな、とあらためて感じました。
http://www.youtube.com/watch?v=teBIQpbhaQI

半姉ブエナビスタと同じく馬体はさほど見栄えがしません。たしかに品はあるのですが、筋肉量は少なく、まだ幼さを残しています。418キロの馬体重は出走18頭のなかでガーネットチャームと並んで最軽量。5月13日の誕生日は最も遅いものです。さらにキャリアわずか1戦。それであのパフォーマンスですから素質はズバ抜けています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106278/


競走馬は大きいほうが有利です。「TARGET frontier JV」で馬体重別の競走成績を調べてみると、たとえば400〜419キロの馬は連対率7.7%ですが、500〜519キロの馬は17.0%です。1走あたりの賞金額を比べてみると、前者の57万円に対し、後者は190万円です(00年以降)。

小柄ながら大柄な馬に伍して一流の成績を収めている馬には、不利を補う何らかの武器があります。良質な筋肉であったり、敏捷さであったり、心臓の強さであったり、精神力であったり、それはさまざまです。

Hyperion や Northern Dancer や Mill Reef など、小柄ながら歴史的成功を収めた種牡馬は、小ささを補うプラスアルファを子に伝え、そうした卓越した“何か”がサラブレッドの進化に影響を及ぼしてきたという面は確かにあると思います。

ジョワドヴィーヴルは、その小さな馬格で、なおかつ筋肉が付ききっていない状態で今回の芸当をやってのけたのですから、尋常でない資質を秘めています。具体的にいえば心臓の強さと筋肉の質、そして走法でしょう。

心臓についてはデビュー前の心肺機能テストの数値がケタ違いだったと聞きます。筋肉についてはあの薄い馬体であれだけのバネを生み出しているのですから良質であることは疑いようがありません。走法については首を支点として全身が躍動するフットワークが印象的です。これは父ディープインパクトによく似ています。


レース後、表彰式に向かう福永祐一騎手が、吉田勝己ノーザンファーム代表の傍らにやってきて、「いやぁ強いですよ、凄いです!」と話しかけました。吉田さんはニコニコと笑って聞いていました。

松田博資調教師もえびす顔です。「2戦目にこれだけ変わるとは思わなかった。このまま無事に行ってくれたらいいですね。とくにいじるところもないし」。このレースを勝った過去の管理馬2頭(ブエナビスタ、レーヴディソール)との比較を問われると「同時期に出てこないと分からんよね」とかわしていました。


配合については11月15日のエントリー「スパッと切れたジョワドヴィーヴル」に記しています。一部を転載します。
http://kuriyama.miesque.com/?day=20111115

「ビワハイジが伝える瞬発力は、主に Sir Gaylord に由来していると思われます。Sir Gaylord は抜群の切れ味を誇った Sir Ivor の父であり、瞬発力のお化けだったダンシングブレーヴの血統においても大きな役割を果たしています。レーヴディソールはその母レーヴドスカーが Sir Gaylord 4×4です。ビワハイジは Sir Gaylord の主要な構成要素である Turn-to と Princequillo を継続し、Foreseer≒Sir Gaylord 2×3としています。これが瞬発力の安定供給を可能としている鍵ではないか、と思われます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109481/


ビワハイジの最高傑作ブエナビスタは、Nijinsky 4×3によって底力を獲得しました。瞬発力は往々にして柔らかさを母体とし、そこには非力さも見え隠れしますから、大レース向きの底力や大物感といったものを生み出すには、剛健な血を合わせることが近道です。ブエナビスタはそれに成功しました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103319/


ジョワドヴィーヴルはこれとはタイプが異なります。父ディープインパクトはビワハイジとよく似た構成の Alzao を抱えており、Sir Gaylord をはじめとする主要な構成要素をそっくり継続しています。Alzao≒ビワハイジ3×1といってもいいでしょう。この配合は過激です。剛健さは感じられないものの母の圧倒的なポテンシャルでカバーしています。」


Sir Gaylord がなぜ瞬発力を伝えるかについては、旧ブログの昨年5月12日のエントリー「Sir Gaylord の瞬発力」ごご参照ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/05/sir-gaylord-ce0.html

ジョワドヴィーヴルの配合評価は、血統屋の電子書籍『種牡馬別好配合馬リスト ディープインパクト編』では◎、『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」でも推奨しており、ディープインパクト産駒としては最高レベルに評価していました。ただ、今回のレースについては不安材料もそれなりにあったので▲にとどめました。想像以上の強さでした。

◎アナスタシアブルー(7番人気)は12着。序盤にいい位置を取りに行ったのですがスローペースで馬が力んでいましたね。馬の力も足りませんでした。





シンコウラブリイ死す


 個人的には“クールな才女”といったイメージがありました。同じ岡部騎手が騎乗したシンボリルドルフの女版といった感じですね。


関東でのレースはしょっちゅう見ていましたが、引退レースとなったマイルチャンピオンシップ(G1)は京都競馬場まで出かけました。第7Rの京都3歳Sをナリタブライアンが3馬身差で圧勝し、これはケタ違いに強いなぁ〜と感心していたら、上空を暗く覆っていた雲から雨が落ちてきました。雨脚は増すばかりで、メインレースは不良馬場。こんな馬場で大丈夫だろうか、という不安をよそに3番手から抜け出して完勝しました。管理する藤沢和雄調教師にとって記念すべき初のG1タイトルです。
http://www.youtube.com/watch?v=DeWBjzi2_Ew


通算成績15戦10勝。馬券対象から外れたのがわずか1回という安定性は強い精神力のたまものでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1989108586/



90年代の日本競馬に Caerleon が果たした役割は大きかったと思います。活躍拠点のイギリスでは、ジェネラス(英ダービー、愛ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)を筆頭に多くのG1馬を送り出し、88年と91年には英愛リーディングサイアーに輝きました。アメリカで走った Kostroma が芝9ハロンで1分43秒92という世界レコードを樹立したように、堅い馬場が得意で瞬発力もあったので、わが国の競馬にフィットしました。


日本で走った産駒は、シンコウラブリイのほかにフサイチコンコルド(日本ダービー)、ビワハイジ(阪神3歳牝馬S)、エルウェーウィン(朝日杯3歳S)、ゼンノエルシド(マイルチャンピオンシップ)などがいます。


藤沢和雄厩舎は Caerleon がよく似合いました。前出のシンコウラブリイ、ゼンノエルシドのほかに、母の父に Caerleon を持つタイキシャトルも所属していました。ちなみに、タイキシャトルの母ウェルシュマフィンとシンコウラブリイは配合構成がよく似ています。



Caerleon 産駒は素軽く気のいいタイプが多いので、調教でいっぱいに攻めなくても走ります。馬なり調教で知られる藤沢和雄厩舎で良績を残したのも、そうした個性と無縁ではないでしょう。久々をものともせず日本ダービーを勝ったフサイチコンコルドは、その中間に何度か熱発し、十分なけいこを積んだとはいえない状態で差し切りました。


シンコウラブリイは繁殖牝馬としても成功し、ロードクロノス(中京記念)、トレジャー(目黒記念−2着)、レディミューズ(チューリップ賞−2着)、ピサノグラフ(フローラS−4着)などを出しています。孫の代からはシンメイフジ(新潟2歳S、関東オークス)が出ており、しっかりと血を繋いでいます。活躍馬は今後まだまだ出てくるでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103593/



12月5日、蹄葉炎のため22歳で逝きました。11年生まれのディープスカイの牝が最後の産駒です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011100429/






ダート戦で注目したいスパイキュール産駒


 あまり数は多くないのですが、ダート戦で注目すべき成績を挙げているのがスパイキュール産駒です。現在、3世代が競走年齢に達し、ダート戦で連対率19.7%(芝では3.6%)という成績。これはかなり優れた数字です。たとえば、スマートファルコンやエスポワールシチーの父ゴールドアリュールはダート戦の連対率が19.2%です。


スパイキュールは現役時代10戦7勝、ダート戦に限れば7戦全勝と負け知らずでした。OP特別を5馬身差で圧勝したのを最後に骨折のため現役生活に別れを告げたのですが、無事ならばダート重賞をいくつか勝っていたでしょう。サンデーサイレンス産駒としては屈指の砂巧者でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2000101557/



母はクラフティワイフ。カンパニーやトーセンジョーダンなどの活躍でここ数年急速に注目度が高まっているファミリーです。


 クラフティワイフ(f.1985.Crafty Prospector)
   ブリリアントベリー(f.1990.ノーザンテースト)
   │ ニューベリー(c.1998.フジキセキ)
   │ レニングラード(c.1999.トニービン)
   │ カンパニー(c.2001.ミラクルアドマイヤ)
   ビッグショウリ(c.1991.ノーザンテースト)
   エヴリウィスパー(f.1997.ノーザンテースト)
   │ ダークメッセージ(c.2003.ダンスインザダーク)
   │ トーセンジョーダン(c.2006.ジャングルポケット)
   スパイキュール(c.2000.サンデーサイレンス)
   バトルバニヤン(c.2004.ジャングルポケット)


産駒成績はこのところ好調です。先週日曜日、中山9Rの霞ヶ浦特別(1000万下・ダ1800m)をドレミファドンが勝ちました。出遅れて最後方から進み、3コーナーから大外をマクって突き抜けるという強い競馬でした。ゲートさえまともに出れば準OPでも即通用するでしょう。


地方競馬では10月以降に限っても、ホクセツサンデーが楠賞(園田ダ1870m)と園田金杯(園田ダ1870m)を連勝したほか、スマートインパルスが勝島王冠(大井ダ1800m)を、ナムラダイキチがサラブレッド大賞典(金沢ダ1900m)を勝ちました。中央のベルモントレーサーは門別競馬場に遠征して北海道2歳優駿(Jpn3・ダ1800m)で2着に食い込んでいます。ちなみに、ホクセツサンデーとスマートインパルスはいずれも母の父がタマモクロスです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100948/



交配している牝馬の質があまり良好とはいえないなかでこれだけの成績を挙げるのですから優秀ですね。種付け頭数は、初年度の06年から71頭→57頭→52頭→65頭とコンスタントに50頭以上の牝馬を集めていたのですが、10年は25頭と激減し、11年はわずか9頭。これだけ走っているので来年は大幅に上昇するのではないでしょうか。11年の種付け料は受胎条件で20万円、出産条件で30万円。もし来年据え置きならコストパフォーマンス的には最高だと思います。


今週は土曜中山8Rの1000万下(ダ2400m)にパクサとヘリオスの2頭が出走します。チャンスは十分あるでしょう。







プロフィール

カレンダー

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< June 2019 >>

最近の記事

カテゴリー

アーカイブ

recent comment

  • 「一口馬主好配合馬ピックアップ」でジーワンを6頭ピック
    SuKe
  • 競馬道OnLineプレミアム予想 3月30、31日分
    栗山求
  • 本日夜に『KEIBAコンシェルジュ』に出演します
    メロン
  • 『競馬場の達人』に出演します
    10年目だけど初心者馬券師まつ
  • 競馬道OnLineプレミアム予想 3月30、31日分
    ohu-nob
  • 『競馬場の達人』に出演します
    梅こんぶ
  • 『競馬場の達人』に出演します
    Y子
  • 「一口馬主好配合馬ピックアップ」でニューワールドRを追加ピック
    栗山求
  • 「一口馬主好配合馬ピックアップ」でニューワールドRを追加ピック
    バリュー
  • 「一口馬主好配合馬ピックアップ」でユニオンをピック
    栗山求

recent trackback

LINK

検索

携帯

qrcode